「よっ、大統領」の元ネタが「棟梁」では無いという話

| コメント(1)



「大統領」という訳語の初出は判明している限りにおいては1853年のフィルモア大統領の親書である。現時点では、これより先に「大統領」という訳例は見当たらない。この親書は、オランダ語と漢文を介して英語から邦文に訳された。その際に蘭文和解では「伯理璽天德」と音訳され、そして漢文では「大統領」となっている。

『ペルリ提督日本遠征記』によると、ペリーが幕府に英語正文と蘭訳、漢訳を手交し、オランダ語通訳のアントン・ポートマン(Anton Portman)が堀に対してその文書の性質を説明したとある。またペリーは先述の望廈条約を参考にして中国語に堪能なサミュエル・ウィリアムズ(Samuel Wells Williams)に手伝わせて条約の草稿を書いている。「大統領」という訳語の発案者はウィリアムズである可能性が高い。残念なことにそれを裏付ける資料は今のところ発見されていない。

おそらく『英和對譯袖珍辞書』に「大統領」という訳語が登場しているのはこうした経緯を踏まえていると考えられる。堀自身は先述のマクドナルドから教えを受けていないが、通詞の一人である森山栄之助は長崎でマクドナルドから大統領について説明を受けている。

つまり、「亞美理駕大合衆國大統領姓斐謨名美辣達」という漢訳はアメリカ側が行ったことが分かる。オランダ語の原文では「President der Vereenigde Staten van America」である。日本側によるその和訳は「伯理璽天德プレシデント」である。箕作阮甫の蘭文からの訳も「伯理璽天德である。もし日本側が「大統領」という訳語を既に考案していたのであれば、オランダ語原文から和訳した際に「大統領」という訳語をあてていたはずである。


昨夜当方のツイッター上のタイムライン上でも話題に登った、人をヨイショする時の「いよっ、大統領!」という掛け声。これが元々「大・棟梁」で、家を創る一番偉い人が「棟梁」なので、さらにその上を行く人くらいに偉いからとか、上記のフィルモア大統領が町人生まれで、町人の中では棟梁が尊敬されていたからという話が定説化されていた。で、調べてみたらアメリカの大統領関連の研究家であられる西川秀和先生(

カテゴリ:

関連記事             

コメント(1)

参考にしていただきどうもありがとうございます。いろいろ調べましたが・・・・・・正直申しますと、何が語源なのか状況証拠しかなくてはっきり分からないんです。ただ「大頭領」という表記はあっても「大棟梁」という表記は見当たらず、棟梁が語源だという俗説は根拠がないと言えるかなとそんな程度です。

どうやら日本人は最初はアメリカの制度が分からず、大統領をアメリカの国王かと勘違いしていたくらいですから。一部の人を除いてよく分からなかったでしょうね。

英語で言えばPresidentですが、それを「議長」と訳すか「大統領」と訳すか今でも難しいところです。今、EU「President大統領」なる存在がいますが、訳語としては「議長」なのではないかと思っています。

コメントする

            

最近のコメント

Powered by Movable Type 4.27-ja
Garbagenews.com

この記事について

このページは、不破雷蔵が2010年12月 6日 08:20に書いた記事です。

ひとつ前の記事は「関東近辺の「昔」の土地の使われ方が分かるステキ地図「歴史的農業環境閲覧システム」」です。

次の記事は「阪神淡路大震災当時の報道」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

* * * * * * * * * * * * * *


2021年6月

    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30