[もう一度食べたい:シベリア パン屋の"幻のケーキ"=津武欣也]
探しものは足元にあった。東京・神田駿河台の明治大学から毎日新聞社に向かう途中のオフィスビル1階。ガラス戸越しにのぞいた食品トレーの端っこに、遠慮げに載っかっていた。黒の羊羮(ようかん)かアンコをカステラではさんだような姿と形。読者からのはがきに描かれていたお菓子が、まさにこれだった。「シベリアですか?」「はい、祖父の代からの商品。今では"幻のケーキ"とか言われてます」
はがきは神奈川県小田原市の主婦、内田智恵さん(47)から寄せられたものだった。消印は「平成20年5月」。届いてから、もう2年以上もたっている。
「近くに住む母(79)が『もう一度』と願うのはシベリアというお菓子。子どもの頃、おじさんが上京するたび、お土産にもらっていたそうです。とてもハイカラな味で『5人兄妹で分け合うのが大変だった』と話します。そのお菓子を思う存分、母に食べさせてあげたい。私も一緒に味わってみたい」
文面のわきに色鉛筆で描かれた「シベリア」の絵。その絵がなぜか心に残り、ケーキ屋さんをのぞくたびに探していたが、パン屋さんにあるとは思ってもみなかった。
出合ったのは神田錦町の「アムール・ヱーパン」。昭和5(1930)年の創業で、「シベリア」の味と製法は当時のままを守っているという。
昭和初期には大人気のお菓子との話もある「シベリア」。名前の由来も発祥も諸説あって謎の多いお菓子なんだけど、元記事にあるように「幻のケーキ」とかいうような大げさなものじゃない。昔と比べて人気はそれほどあるわけじゃないけど、ヤマザキから出ていることからも分かるように、いまだに売れている商品で、ちょっと探せばすぐに見つけることができる。
まぁ、ケーキ屋をのぞいていた云々ってのもあるんだろうけど、スーパーやコンビニでちょっと注意をしていればすぐに見つかったはず(上の写真も和菓子コーナーにあったヨ)。あるいは見つからなければ「こんな感じのお菓子なんですが」と、周囲の若い人、さらにはインターネット上で聞けば半日やそこらで返事が山のように来たはずだ。
......ということを考えると、人生の新たな発見や、素晴らしい想いとの再会を得るためにも、情報ツールとしてインターネットにアクセスするってのは大切なことだし、こういう話の主人公の方々にこそ、ネットを使ってほしいなあ、と切に思う今日この頃なふわりんであった。
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