【流言・デマによるパニックを心配して情報を伏せている方々へ】
吉川(2003)は,Mileti and Peek (2000)の研究を紹介し,危機管理の専門家が市民の反応に対してもっている以下の7つの見識,すなわち
(1)人々はパニックを起こす
(2)警告は短くすべき
(3)誤報を出すことは一方的に悪いことである
(4)情報源は1つにすべき
(5)人々は警報の後直ちに防衛行動をとる
(6)人々は理由付けがなくても指示に従う
(7)人々はサイレンの意味がわかる
はすべて誤解(神話)であると指摘している.とくに(4)については,「危機に直面した人々は,多様な情報源からの情報を求めている.多様な情報源からの一貫した情報を得ることによって,1)警報の意味と状況を理解し,2)警報の内容を信じる,という2つのことが可能になるのである」と解説されている.
これに対し,藤井(2005)は,専門知識が乏しく判断能力に欠ける防災行政担当者にとって,相反する情報の存在は思考停止と無作為を招くので望ましくないとの見解を示している.Mileti and Peek (2000)は,多様な情報源中に相反するメッセージがあることは市民にとっても望ましくないとしている.しかし,藤井は,インターネットが普及した現在において情報源の単一化は不可能であるとも認識し,気象庁や予知連が良質の情報を迅速に発表していくことの重要性を説いている.(文献2からの抜粋)
インターネットや携帯電話、ソーシャルメディアの普及で情報の伝達スタイルや構造が大きく変化し、社会情報伝達学的な「常識」もこれまでとは違ったものになりつつある。それを踏まえた、専門家による「流言・デマとパニックの関係」に関するまとめ。
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