......と、例の読売新聞が「原発全部止めても1世帯あたり1000円/月我慢すればOKですっキリキリキリッ」的な記事をぶちかました話の一次ソースについての話。まとめ記事を、ということで書き始めて色々やっていたんだけど、「なんだ結局そのまま丸写しになるじゃないか」ということで、非常にバツが悪くなるので、本家サイトでの記事作成は断念した。概要としては「2011年7月再稼働開始(資料では「7月開始シナリオ」)「2011年12月再稼働開始」(「12月開始シナリオ」)「再稼働無し」(「再稼働無しシナリオ」)を想定し、そのうち最後の「再稼働無しシナリオ」を中心に話は進められていく。
ざっと箇条書きにすると(最後のシナリオが前提)、
・原発再稼働が無いので(火力の臨時増加分を加算しても)総電力供給は漸減し、2012年夏は「現在の節電状態での最大電力」が「電気事業者総計の電力供給」を上回る。
・沖縄をのぞく各電力管轄で多かれ少なかれ(東電・東北電は15%の節電を果たしても)需要が供給を上回る事態が発生する。
※しかもこれは「火力発電において石炭・LNGはほぼ上限、石油は100%を超える稼働率が求められた上での試算」なので、これすら事実上不可能。
・火力発電所の供給力増加のための燃料調達コストは2010年度比で石炭1910億円、LNG1兆3960億円、石油1兆8870億円。計3兆4730億円(需要急増による単価上昇は考慮せず)
・調達コストが単純に電気料金に上乗せされると、電気料金は3.7円kWh上昇する(家庭・産業合わせて)。これは家庭用なら1か月あたり1049円・18.2%の増加、産業用なら現行の10.22円に対して36%の増加となる(製造業などの産業において、国際競争力の大幅な減退が懸念)。
・さらに燃料の大規模輸入増加は「単価の増加(買い手が増えれば値が上がるのは当然)」「燃料調達コストの増加による海外への所得移転(燃料代の代金は海外に移る)」をもたらし、これもまた経済力の低下につながる。
で、まぁ。仮に「産業用の電力値上げ分」を全部「家庭用」でかぶって、製造器用などへの負担を無くすようにした場合、【東北・東京・中部電力の一日単位の最大電力需要推移をグラフ化してみる(2011年5月12日まで反映版)】のグラフにもあるように、全電力の1/4くらいが家庭用だから、
↑ 販売電力量、電灯・電力需要実績(比率、2010年度分)(再録)
4倍にして1か月あたり4000円くらいかな(フェルミ推定レベル)。現在の日本の世帯数が約5000万世帯なので、そこから計算すると、年間約7万円・月あたり6000円近く。まぁ、単独世帯も全部ひっくるめて、月当たり5000円くらいの電気料上乗せを甘受すれば、商工業レベルでの電気料金周りにおける経済衰退は防げるかも、というところだね(もう少し時間をかけて精査する必要があるんだろうけど、覚書だしー)。
もちろん年間3.5兆円の資産が「これまで以上に」海外に流れていくこと(これを忘れてたよ。数年前の原油価格高騰の時にも大問題になってたのにネ)、エネルギーの供給面での安定度は大きく減退する、まず間違いなく各資源(ガス、石炭、原油)価格は上昇するので、それに伴いコストも増大する、と。
「特定規模電気事業者をフル活用云々」という話も出てくるだろうけど、結局同じよ? 大部分は火力だし、燃料はどこから調達するのかってことだからね。
あと追加。「年間5000億円の国費が原発周りの補助費として出ているはずだから、原発全部止めれば必要なくなるからその分を全部使えばいい」との主張もあるけど、これって放射線周りの研究費とか運用機構の運用費まで全部ひっくるめてるからね。それと、止めたから全部すぐに無くせるってわけじゃないんだよ? シムシティじゃないんだから、停止したら全部突然さっくりとそこから消えて無くなると思ってるのかな。
まぁ仮に、主張通り5000億円を全部丸ごと使えたとしても、残り3兆円だねぇ。あらあらうふふ。
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