「チェルノブイリ膀胱炎」の検証レポート

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○チェルノブイリにおけるセシウムによる健康被害について
WHO ならびにUNSCEAR の報告(1,2)では、チェルノブイリ事故では小児甲状腺癌以外の放射線被ばくによる健康影響のエビデンスはないと結論付けられており、これが現在の世界的なコンセンサスである。膀胱がんが増加する、そしてセシウム-137 が膀胱がんに進展する膀胱炎を引き起こすことは、エビデンスとして採用されていない。

福島氏は、膀胱粘膜が、極めて低濃度であるが長期間セシウムに暴露されたことにより、放射線による物理的なDNA 損傷ではなく、活性酸素種の産生が病変の発生や進展に関係していると推測している。しかし以下に述べる点から、膀胱病変をセシウムと関連付けるには早計であると言わざるを得ない。

まず、前立腺肥大による膀胱への影響(※※)は当然解析すべきものであるが、「膀胱疾患の兆候を示さない前立腺肥大の患者からサンプルを得た」とあるだけで、患者の健康状態(既往歴や薬の服用歴など含む)、良性前立腺肥大の程度、二次的な症状の詳細、ホルモン変化等臨床検査値などとの詳細な比較がなされていない。

次に疫学研究の観点から、良性前立腺肥大前立腺肥大手術を受けた住民と対象が限られていること、膀胱炎ならびにがん発生リスクを解析する上で必要なライフスタイル等の情報がないに等しい(喫煙歴のみで、汚染地域と非汚染地域に喫煙歴の差はなかった記載)ことがあげられる。そして、被ばく線量評価がなされておらず、被ばく関連の情報は、土壌汚染地区に住んでいるか否かと、手術前日尿中セシウム濃度だけである。これらから被ばく線量評価は困難である。


先日発表された、「チェルノブイリ膀胱炎」を否定する結論が見出された検証レポート。ざっとまとめると......【「原発事故の影響で米西海岸でも乳幼児死亡率ががが」のトリック】【数字を悪用する人たち】あたりにもあったような、調査不足や数字の「都合の良さそうな部分の抽出」などで結論付けられており、これをもってして肯定するのはどうよ、優位性は数理的に認められないという話。

こういう話は得てして「リスクが高い結論」が(話の真偽は別として)広まる傾向にあって、それを打ち消すような事実、正論的論評は無視され得るからねえ。先日もちょっと触れたけど、そういった誤報・疑報・虚報の広域拡散に、いわゆるまとめ系サイトのうち質(とタチ)の悪いところが加担しているのが、困ったものだったりする。


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このページは、不破雷蔵が2011年9月28日 08:36に書いた記事です。

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