●ゲームコンテンツを重視するAppleのiPad戦略
ゲームコンテンツの一例(MetalStorm: Wingman)(C)2011,Z2Live Inc.
また、新iPadの発表でも、Appleはゲームを重要コンテンツの一角としてフィーチャした。バンダイナムコゲームスのエースコンバットとおぼしきタイトルが紹介され、ゲーム向けの3DグラフィックスツールのパートナーとしてAutodeskが紹介され、米国でトップのゲームエンジンベンダであるEpic Gamesの新作「Infinity Blade Dungeons」の制作が発表された。Infinity Bladeは、Epic GamesグループがiOS向けにリリースしているAAAタイトル(ゲームコンソールなどの品質のゲームの通称)だ。同社のゲームエンジン「Unreal Engine 3」のiOS版のショーケースともなっている。
もちろん、Appleにとってゲームはコンテンツの1つでしかない。しかし、ゲームの掘り起こしに力を入れていることも確かだ。 Appleのこうした姿勢は、このコラムの前回の記事と矛盾するように見えるかもしれない。前回の記事では、新iPadのRetinaディスプレイの4倍の解像度(2,048×1,536ドット)と、現状据え置きが予想されるメモリ帯域のアンバランスから、Appleは、当面は3Dゲームの多くが新 iPadのフル解像度に対応しないと予期しているだろうと書いた。
しかし、このことは、Appleが新iPadでのゲームコンテンツに消極的であることを意味していない。むしろ積極的であるからこそ、解像度を従来iPadディスプレイ(1,024×768ドット)の整数倍にすることで、従来解像度でもRetinaディスプレイに問題なく表示できるようにしたと考えられる。ゲーム開発側に、無理にRetinaディスプレイの解像度を埋める必要はないというメッセージだ。Appleは同じ戦略をiPhone でも採っており、そのため整数倍解像度がiOSデバイスの呪縛となっているが、ソフトウェア側に対しては優しい。そして、メモリ帯域が追いつけば、さらに Appleのゲーム攻勢は激しくなるだろう。iPadは、既存ゲーム機のように数年間スペック据え置きではなく、毎年スペックが向上する。
なぜ、AppleはiOSデバイス、特にiPadでのゲームを重視するのか。その理由の1つは、ゲームがプラットフォームの大きな差別化要素になるからだ。他のコンテンツと違って、ゲームは技術的な面で移植にハードルがある。特に高度なグラフィックスのゲームになればなるほど、移植がやっかいになる。少なくとも、作る側にとっては、特定のデバイスにエクスクルージブに作った方がラクだ。そして、iPad上でのゲームビジネスのエコシステムが育ち、ゲーム専用デバイスの市場を食うようになれば、Appleにとって成功だろう。
【ボードゲームとデジタルゲームを合わせてリアルにしたら...「Fleet Commander」】や【ボードゲームとiPadとソーシャルゲームと】【ボードゲームとiPadとソーシャルゲームと】【ボードゲームとiPadとソーシャルゲームと】【新世代のテーブルゲーム「ePawn」】などでも触れているけど、タブレット機の可能性の一つに、「ボードゲームとの融和性」というのがある。機動力では劣るけど、既存のゲーム機よりもはるかに表現力は豊かで性能も高い。そして紙などのボードゲームの代替品足り得る可能性も秘めている。面積が足りない? なぁに、【ユニクロ旗艦店の銀座店で大規模デジタルサイネージシステムをNECが納入】でも紹介した「ウルトラナローベゼル(複数の映像機器を極力つなぎ目部分(べゼル幅)を少なくして組合せ、一つの大きな映像機器として運用する仕組み)」の考えで、二つをつなげてしまえばいい。
ボードゲームを出しているメーカーさんは、早く色々と動いてほしいなあと思う今日この頃。
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