[「受け答え」の技術]
夕暮れ近く、おなかがすいたおじいさんは、目に付いたハンバーガーショップに入りました。注文をして、レジの女性に「いくらだ」とポケットから取り出したのは、くしゃくしゃのティッシュペーパー。
介護士は一瞬、青ざめました。他人から間違いを指摘されると、認知症の人は逆上して不安定になることがよくあるからです。
でも、レジの若い女性は落ち着いて、笑顔でこう答えました。
「申し訳ありません。当店においては現在、こちらのお札はご利用できなくなっております」
おじいさんは「そうか、ここでは、この金は使えんのか」と、あらためてポケットの小銭を取り出しました。
介護士はすっかり、この店のファンになったそうです。
ホームヘルパーは相手がどのような状況にあるかはあらかじめ知っているけど、レジの人はそういうわけにもいかない。事前の少ない情報や経験から瞬時に判断して、このような受け答えをしたと考えると、やはり「手慣れている」「素晴らしい」と思わざるを得ない。
一般の人には難しいかもしれないし、良いことと断じるのもどうかなと思うけど、「失敗や勘違いがあっても、あからさまに否定せずに誘導していく」というのは忘れちゃいけないなあ、と思わされるお話でした。
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