【廃止された「子ども手当」 出生率上昇させる成果あげていた】
【同魚拓】
↑ 合計特殊出生率(人)(2008年~2010年)
実際、子ども手当の成果は上がっていた。実施後、2010年の日本の出生率は1.39と(前年比0.02ポイントアップ)、2年ぶりに上昇に転じている。こういうデータを役所は宣伝しないし、その意を受けた記者クラブ・メディアも報じない。
子ども手当の効果は海外でも証明されている。日本と同じように少子化に悩んでいたフランスは、第2子以降には20歳になるまで月2万~3万円程度の家族手当(所得制限なし)を給付するなどして、出生率をEU加盟国2位の2.01(2011年)まで押し上げた。
日本でも出生率が上向きの兆しを見せていた矢先、その原動力は唐突に廃止されてしまったのである。
雑誌からの転送記事として数日前に挙がっていたこの記事。以前人口動態統計月報年計などを元にした記事【日本の出生率と出生数をグラフ化してみる(2010年分反映版)】の印象とどうも違ってたけど、まぁいいかってことで打ち捨てていた......というわけにはいかないような雰囲気。これをトリガーに、誤解釈的な話が広まる気配を感じたので、とりあえず再検証。
記事作成の際に用いたデータを元に、とりあえず一つ目のグラフを作成。確かに「2010年の日本の出生率は1.39と(前年比0.02ポイントアップ)」「2年ぶりに上昇に転じている」。この部分は間違いない。
しかし、以前の記事を見た人ならすでにお分かりの通り、さらに過去の部分まで伸ばすとこの通り。
↑ 合計特殊出生率(人)(2001年~2010年)
↑ 合計特殊出生率(人)(1999年~2010年)(移動平均2区間による近似曲線追加)
↑ 合計特殊出産率(人)(1925年~、再録)
直近では2005年を底値とし、それ以降は少しずつ上昇を続けている(高齢出産の増加が主な要因)。そして2008年から2010年の動きは「2010年に何らかの特異条件によって持ちあげられた」のではなく、「2005年から続く上昇基調の一プロセス」でしかないことが分かる。
つまり「2010年の日本の出生率は1.39と(前年比0.02ポイントアップ)」「2年ぶりに上昇に転じている」の部分は正しくとも、それ以外の要素と結び付けられる確からしさはどこにも無い、というのが結論。
出生率周りがそんな短期間に成果を見せる動きを示すってこと事態、ほとんどあり得ない話なんだけど、今件の元記事は逆に「(少なくとも短期間では)子ども手当は出生率増加には"兆し"となるようなレベルの寄与はしていない」ことを実証してしまったことになる。
「フランス云々」という話もあるけど、これも多分に、単純に子ども手当云々と結び付けるのは、こじ付けに過ぎる。詳しくは【フランスとドイツの家庭生活調査-フランスの出生率はなぜ高いのか-】参照のこと。社会文化的な違い、各種制度での支えがメインで、さらに記事でも何度か取り上げている「同棲による婚外子」が主流という要素もある。
以上、覚え書きとして。恐らくこの記事を「提示資料」として使う機会があるだろうね。
......そもそもこのような動きをしている場合、「転じている」という表現は使わないぞなもし。
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