『「長門有希ちゃんの消失」第四巻』
『涼宮ハルヒの憂鬱』の1エピソード『涼宮ハルヒの消失』における「消失世界」を舞台のベースとし、さらに本作とは違った「IF(もしも)」の世界をややコメディタッチで描いた漫画の第四巻。以前YouTube上で無料公開された後にOVA化された『涼宮ハルヒの憂鬱』のパロディ・コメディタッチ版『涼宮ハルヒちゃんの憂鬱』と同じ作者ぷよ氏が描く、非常に稀有なポジションの作品。
作者本人も語っている「リビルド」という言い回しにもあるように、本作の世界から「不思議要素」を一切取り除いた上で「消失世界」を創生、さらに状況設定を一部いじった形にして再構築をかけたもの。
「奇数巻がコメ多め、偶数巻がラブ多め」「ラブ多め巻にはなんと有希ちゃんに恋敵が」との筆者コメントにもある通り、今巻でも主人公・長門有希の「恋敵」が登場する。......いや、厳密には違う、けど間違ってない。
前巻最終話で自動車事故に遭遇した長門。彼女に起きた変化が、ややシリアスな流れで淡々と語られていく(シリアスな世界観を形作るためか、ハルヒと古泉、みくるちゃんは殆ど登場せず)。一時は「もしかして」と読者をドキドキさせるけど、やはり「あちら」とは独立していた「こちら」であること、にも関わらずクロスオーバーしている香りがあちこちに感じられ、不思議なリアリティ・既視感の中、話は進む。
ネタばれになるので詳しくは触れないが、本作での長門のバックボーンにある「情報」と、人が人であるための証、自分が自分足りえるために必要もの、それが切々と語られていく様子は、じわじわくるものがある。終盤にかけてたたみかけられるように高まり行く感情と、迫りくる現実のはざまに揺れ動く「恋敵」の想いに、限りない切なさを覚える人も少なくあるまい。
表紙のイラストを見て、「あれ?」と思った人は、その想いを抱いたまま、読み進めてほしい。
※追伸:読み終えるまでカバーは取らないように。そして読み終えたらカバーを取り、まずは前面、そして次に後面の本紙部分の表紙に目を通してほしいナ。
(最終更新:2013/08/26)
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