現在の議論は、電源構成(原発比率、再生可能エネルギー比率等)、CO2削減量のみに関心が集中し、「健全な経済成長との両立」の視点に立った議論が不足している感がぬぐえない。
しかし、「シナリオ(選択肢)」を選ぶことは、その選択肢の下で達成可能な経済成長率を選ぶことであり、それを通して将来の国民生活や雇用の在り様を選ぶこと。すなわち、問われているのは「この国の在り方」である。
したがって、エネルギー・環境会議がシナリオを提示するにあたっては、下記(1)~(3)にお応えいただくことにより、各シナリオがどのような「この国の在り方」を目指しているのかを国民に分かりやすく説明していただきたい。
(1) 各シナリオと「日本再生の基本戦略」(23年12月閣議決定:努力目標は実質成長率2%程度)とはどのように整合性が取れているのかご提示いただきたい。
(2) 電力料金が最大約2.5 倍にも上昇し、GDP、家計消費もかなりのマイナスが見込まれる中、各シナリオの結果、他の政策努力とも相まって、経済成長率、家計可処分所得、雇用は最終的にどのような水準になるのか、国民一人当たりの負担額はどの程度になるのかご提示いただきたい。
(3) 製造業の海外移転等の可能性に対する科学的な検証を自ら十分
に行った上で、合理的、現実的なシナリオをご提示いただきたい。
ここまで「質問」と「アンダーライン」の多い要望書が、「石油連盟社団法人セメント協会」「電気事業連合会」「一般社団法人電子情報技術産業協会」「一般社団法人日本化学工業協会」「一般社団法人日本ガス協会」「一般社団法人日本自動車工業会」「日本製紙連合会」「一般社団法人日本鉄鋼連盟」の連名で提示されることが、いかに異常な事態なのか。関連団体・業界に所属している人なら、背筋が寒くなるほど理解できるはず。
内容を要約すると「エネルギー・環境会議でああだこうだと言ってるけど、お前らちゃんと物事考えて、計算した上で口に出してる? 子供の『空想ノート』じゃないんだし、計算の整合性とか経済について考えてる? 『政治主導』に振り回されて、ウケがよさそうなことばかり考えてない? 希望的憶測じゃ世の中は動かないよ??」という感じ。評価としては記事タイトルにある通り、「てんで話にならないので、もう一度最初からやり直して来い」レベルの話。
嘘、オーバーな表現だと思うのなら、資料そのものをしっかりと読むといいよ。これ、私案とか「個人の想い」とかじゃなくて、産業界全体としての公的書面だからね?
まぁ、「今の」政府・政権与党に経済界が三行半をつきつけた......というのは早急に過ぎるかな。でもそれくらいのびりびり感を覚える内容。
コメントする