停電時間の国際比較と安定性と

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↑ 年間平均停電時間(分/年)(2007年、一部2006年)(エネルギー白書2010から)

↑ 需要家一軒あたりの年間停電時間の国際比較(電気事業の現状2010から)
↑ 需要家一軒あたりの年間停電時間の国際比較(電気事業の現状2010から)


停電は多くの場合、電気設備の故障に起因して発生する。とはいえ設備が故障すれば必ず停電するわけではない。多くの国では、送電線1回線、変圧器1台、発電機1台などの機器装置の単一故障時に、原則として供給支障が生じないように電力設備を計画することが基本とされている(ただし影響が限定的な供給支障は許容されるケースが多い)。また送電線2回線故障などの機器装置の2箇所以上の同時故障に対しては、稀頻度であるため一部の供給支障は許容されるものの、供給支障規模が大きく、社会的影響が大きい場合には対策が検討され、リスクとの見合いで実施が判断される。この点から言うと、電力設備の計画の仕方自体はどの国も似たり寄ったりで、停電時間の差異には影響しない。

他方で、日本の停電時間が短いのは、「欧米諸国に比べ、風力・太陽光などの再エネ導入量が少ないからだ。日本の電力系統は、恵まれた条件下でしか低停電率を維持できない。」との批判がある。

日本の電力品質の高さは、電力会社、メーカー、学識者が協力しながら、ハード面とソフト面の対策をしっかり行ってきた成果である。海外の電力会社は、まさに今、スマートグリッドの取り組みの中でこれを目指そうとしているわけであり、日本はこの点では一歩先んじていると言える。ただし、こうした開発の体制が閉鎖的だという批判もあり、こうした批判に電力会社も耳を傾けてもらいたい。一方政府にも、今後の制度改革は、これまでの技術開発体制や現場のオペレーションノウハウを損なうことにならないかどうかに、十分注意して進めて行くことが求められる。


ということで、停電時間の短さと電力の「質」に関する資料を一つ覚え書き。もう少し新しいデータは【「海外電気事業統計 2011年版」】にあるらしいんだけど、有料で結構高価なのよね。ということで残念ながら取得は断念。

閉鎖的だという意見も確かにうなづける部分はあるけど、最終的に何を求めているのか、何が優先されるのかを考えた上で、判断すべきじゃないのかなとは私感として。個人ベースの電力なら「安定度が少しぐらい悪くても安い方が良い」と考える人も少なくないだろうけど、商工業なら「価格は現状維持でよいので(安いにこしたことはないけど)、品質の高いものを安定して」という選択肢を取ると思うな。それを前提とするからこそ、商品の製造も安定して行えるし、結局ランニングコストも下げられる。

要は「一人一人が警棒を持ってヘルメットをかぶって防弾チョッキを着る」のか、「完全警護された建物の中で、私服で過ごすのか」の違い。どちらが効率が良いかは推して図るべし。

蛇足だけど。どうも昨今は特に「メリット」として考えられるようなことを「デメリット」と喧伝して悪しきものとみなしたり、切り口を変えれば利点にもなるものを弱点扱いして捨て去るべきだという論法が多い気がしてならない。なんか違うよな、ともやもやしているのは当方だけなのかしら。

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このページは、不破雷蔵が2012年6月27日 07:42に書いた記事です。

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