↑ 本当は怖い昭和30年代 ~ALWAYS地獄の三丁目~
暴力とカネが全て
日本の暗黒時代へ、ようこそ!
ここ数年、『古き良き昭和』を懐かしむのがちょっとしたブームになっています。そして、そのノスタルジィを一番感じさせるのが昭和30年代だそうです。往時を知る人たちからすると、昭和30年代は『みんな貧乏だったけど』『人情があって』『夢も希望もあった』そうで、今の日本人が失ってしまった大切なものが残っていた時代だったとのこと。当時を舞台にして大ヒットした映画『always 三丁目の夕日』シリーズもそういったイメージを下敷きにストーリーが作られていました。
しかし、そんなノスタルジィが極端に美化されたものだということは、ちょっと調べればすぐに分かります。当時の日本、もとい日本人はまだ成長途中で、明らかな非常識が常識としてまかり通り、モラルもへったくれもない時代でした。毎日がサバイバルであり、一歩外に出ればそこに広がるのはカオス。貧富の差は激しく、ドロドロした人間関係は人々をがんじがらめにしていたのです。
もちろん、娯楽映画の中のいい時代を批判するつもりは毛頭無いし、真実を描いていない! などと高説をたれるつもりもありません。ただ、あまりにもキイすぎると、ウラ側にある汚い部分も覗いてみたくなるもの。
本書を昭和懐古ブームのネガティブな解説本として楽しんで頂ければ幸いです。
昨今はエネルギー周りで「昔に戻ろう」という意見を述べる方が増えており、一つは「江戸時代」、もう一つはこの「昭和30年代」がターゲットだったりする。前者は多分に「銀魂」、後者は「三丁目の夕日」に感化されるところが多いのではないかなあと思うのだけど、ちょいと調べれば山ほどの実データから、描写されているようなステキングな状況ばかりではないことが分かる(それ以前に「銀魂」はまったくの仮想の漫画であって、江戸時代ですらない)。
この本も多分に「悪いところばかり」という感はあるけど、現実を知ってもらうには良い資料といえる。夢を楽しむのはいいけれど、その夢を現実と取り違えて実生活に悪影響を及ぼすのは、いわゆる「ゲーム脳」と同じですよ、と。
(最終更新:2013/08/25)
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