1960年公開の「予科練物語 紺碧の空遠く」(井上和男監督松竹)で、原作の小説「一号倶楽部」(獅子文六)にはない、第二ボタンを女性に渡すシーンが、監督の創作により挿入されました。この映画の公開から、卒業式に思いを込めて女性に第二ボタンを贈る習慣が始まったと考えられます。
井上監督は、2008年の自伝で、
「追いかけてきたおヒナちゃんと山川が出会う橋の上。死地に赴く山川には、形見として渡すものは何もない。だから、胸のボタンを千切っておヒナちゃんの手に握らせるんだ。二人が両手で握りあう一つのボタン、それこそ桜に錨の金ボタンです。18歳と14歳の〈生死の別れ〉、まあ、ボクの〈純愛表現〉でしょう」*。
また、なぜ第二ボタンかの問いに、「だって心臓に一番近いボタンでしょ。山川のハートですよ」*と答えています。
*= 映画論叢19=2008年11月20日国書刊行会発行の井上和男氏著「紺碧の空遠く」をめぐって
......ということで、先ほど本家サイトで挙げた【「卒業の思い出に第2ボタン」あげた経験15.5%・「風習そのものが無い」も3割近く】の補足として。「第二ボタンを卒業式に渡す・受け取る」の風習は、どうやらこれが起源らしい。慣習や風習は時として架空の物語や創作から生み出され、由来が忘れ去られることもあるけど、よもや映画がベースとはねえ......。
ちなみに作品そのものは『紺碧の空遠く~予科練物語~ [VHS] 』で確認できる、けどこれVHSテープなのよね。
(最終更新:2013/08/23)
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