「経済徴兵制」なる詭弁な言葉、その主張の行きつく先は、彼らが目指すものとは正反対の世界

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「集団的自衛権」周りの話で、どこにもその記載が無く、さらにその言葉自身は以前から何度となく噂や欺瞞情報として流されては消えていった「(法的強制力による)徴兵制」の話。公式文章の公開が周知されるに連れて、そこには徴兵制の話など書かれておらず「またデマか」という雰囲気が浸透するに従い、その代替的な話として出てきたのが「経済徴兵制」なる言葉。

主張する人によって多分にニュアンスが異なるので、定義として「これこれこうだ」との断言は難しいのだけど、最大公約数的には「経済的に困窮した人は志願して食いつなぐしかなくなる。経済が行き詰ると、貧しい人の多くは志願するので、実質的に困窮者を対象とした徴兵制と同じである」というもの。

戦前の一時期の状態や、あるいは漫画やアニメ、小説などのシーンでそのような描写が成されることがあるので頭にイメージしやすく、だからこそアピールしやすい、あるいは思いつきやすいという主旨なのだろうけど...昨今ではすでに自衛隊の求人倍率が数倍から数十倍で、人員が足りない足りないってのは、求職(?)者が少ないからでは無く、予算が足りなくて人員を確保できないのが原因。防衛予算の過半は人件費だからねえ。恐らくはこの実状を知らずに、「経済徴兵制」なる言葉を創り上げたんだと思うけど。

んで、上の指摘にもある通り、「経済徴兵制」なるものは、その言葉を使って騒いでいる方々の主旨とは、まったく正反対の方向性を持つ。「経済徴兵制」を掲げて騒ぐ方は「経済的困窮者のみが事実上の徴兵を受けることになる。これは差別だ」というもの。「それならば経済的な状態に関わらず、全員を徴兵した方が、つまり法的拘束力のある、本来の意味での徴兵制を望むのですね」という結論に至ることになる。

このような指摘をすると、恐らく「それは詭弁だ」と逆切れするだろう。でも、「経済徴兵制」が語っているもの、それを持ち出している方々の主張って、精査するとそのような解釈になるからねえ。あるいはノーガード戦法にしよう、とでもいうのかな?

前にも別所で指摘したけど、この「経済徴兵制」にしても単なる「徴兵制」にしても、さらにはそれを含んだ軍周りの噂なり詭弁にしても、大抵は20世紀、第二次大戦前後のイメージを引きずったまま、あるいはゲーム感覚的な設定で、話が作られている事例が多い。その分、多数の人の頭にイメージされやすく、真偽はともかくとしてインパクトは大きく、煽動させやすく、広まりやすいんだろうけど。

まぁ、つまり、いわゆる「欺瞞情報による情報戦」の一手段と見ても良いんじゃないかな。本人達に自覚があるか否かはともかく。

そりゃあ、自衛隊の予算が今の10倍ぐらいになって、中国が群雄割拠化して、アメリカが内乱起こして人口数千万人の二級農業国に落ちぶれて、ロシアが共産主義体制に逆戻りしてソ連に名前を戻して、欧州が焼け野原になるという、「遥かなる星」的な世界になれば、あるいは徴兵制の類は出てくるかもしれないけど......でもあの世界でも、そんな話は一言もなかったんだよな。

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このページは、不破雷蔵が2014年7月15日 07:27に書いた記事です。

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