ドイツの経済優位性と地域的通貨統合の問題点と夢

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欧州債務危機の中でも比較的堅調で、ドイツがコケれば全部だめ的な話まで出ていた、ドイツ経済の手堅さと、その経済に裏付けされた指導力が評価された、という話。ただそれって指摘の通り、周辺他国の生き血をすする......という表現はアレだけど、かなりそれに近いのが実情。特にユーロが大きなメリット(ドイツにとって)となっている。

一定地域で通貨を統合すれば、そりゃ経済面では便利になるんだけどね。お金のやり取りがスマートになる。ただ、お金はその国の基幹であり経済の裏付けにもなるものだから、それが周辺他国と同一化されると、すべてが均一化されてしまう。で......例えば、国境を全部開放して完全に行き来が自由になった場合、人は住みやすい場所に移住しかねない。便宜性は見方を変えると、不公平感を露呈させる。水門を開けば水は高き場所から低き場所に流れる。高い場所にあった田畑は干上がってしまう。

経済でもそれが生じかねない。有力なところはますます恩恵を受け、力不足なところはますます困窮する。隣の国にとって良いことが、自分にとっても良いこととは限らない。


例のIMF主導による緊縮財政もネガティブな影響としては小さからぬものがあるんだけどね。欧州の苦境は大きくユーロという共通通貨とIMFの指導がネックということで考えると、案外すっきりと理解できたりする。三国志の「連環の策」みたいな状況に陥ったわけだ。メリットよりもデメリットの方が多かった次第。

で、だ。


という話はあるんだが、実は


......という話がある。ある意味日本の政治的危機にあったあの3年半のうち、最初にトップに立った鳩山氏による「アジア通貨統合論」。下手すりゃ日本やアジアも、ヨーロッパ同様のエライ状態になっていた可能性がある。ほんの微塵だけど、ゼロでは無かった。もっともその記事の通り、さらに数年前に「そんな構想もあるけど、現実味はナイね」というワーキングペーパーが出ているんだけどね。

時折このような類の話が挙がると「海外ではこんな実例がある」と良い面だけを切り貼りして持ち出す事案があるんだけど、もっと幅広い、全体的な視点を見る必要があるのは言うまでもない。今件、つまりユーロ圏が抱えている同圏内の国家間による経済格差の拡大や、財務的な拘束感、結果として「みんな一緒にコケちゃうね」的な実情も「地域統合的な通貨統合」によるデメリットを示した具体的実例として、覚えておく必要はあると思うんだな。良い面も合わせて、だけどね。

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このページは、不破雷蔵が2014年11月22日 08:36に書いた記事です。

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