マクドナルドと禁煙施策と「顧客が本当に求めていたもの」

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【2014年10月度外食産業売上マイナス1.2%...季節外れの相次ぐ台風上陸で客足大きく減退】
【マクドナルド、8月1日から全店禁煙に・公式発表】

喫煙者は、コーヒーやハンバーガーなど、マクドナルドの商品を目当てに来店していたのではなく、タバコを吸うスペースを求めていたのに過ぎないのです。


つまり、喫煙者はたとえばコーヒーに100円の価値を見い出してたのではなく、タバコを吸う環境を手に入れたいがためにコーヒーに100円を支払って、マクドナルドを利用していたというわけです。顧客が求めているのは、企業が提供する商品だけではありません。商品を利用する環境を含めて価値を判断しているのです。


先行する「ちょい呑み」に続き、先日本家サイトで掲載した外食チェーン店絡みでの後日談的な話。ファストフード・洋食の軟調さは、モスなどもやや弱い部分があるけれど、それより大きな要因はマクドナルド。数年前の最高益云々って話がもう前世紀のような雰囲気すら覚えさせる状況。迷走に次ぐ迷走ぶりは、かつて資料で見た、前世紀末期の戦略的な大迷走の時代をも覚えさせるものがある。ただ今回は、商品ベースでの迷走に留まらないので、危機感はむしろ強い。

今回指摘されていたのは、8月1日までに全店で実施が成された禁煙施策について。親子連れの確保を狙った、クリーンなイメージのためのものであることは容易に想像が出来たけど、マクドナルドはファミリーレストランでは無かった。そこに気が付かなかったのが敗因。また、顧客の少なからずは商品では無く、場を求めていた。これ自身は極めて興味深く、そして同時に危機的な話ではあるんだけどね(何しろ売り物が売り物扱いされていないのだから)。


禁煙はアピールになるけれど、その代替として失うものも多い。禁煙と喫煙を完全に分岐することで双方をこれまで通り取り込めるけれど、完全に禁煙化してしまうと、喫煙派が完全に排除されてしまう。その際、どれだけのお客が離れていくか、リサーチが甘かった感は否めない。上でも触れているけれど、(喫煙者も多分に足を運ぶ)マクドナルドは(家族連れが多く禁煙者を排除しても大きな影響は無い、しかも排除では無く分煙で対処した)ファミレスでは無かったという次第。

そして先日問題となった「カウンターメニューの排除」「60秒アタック」のような、顧客需要を無視した施策も合わせ、マクドナルドの施策決定レベルにおいてリサーチの技術が落ちている感は否めない。


この辺りの話は一次ソースが見つからないので「そういう話もある」程度の認識に留めておく必要はあるのだけど、実体感レベルでも似たような雰囲気は覚える機会が多々あったし、上記の「8月1日から禁煙」というニュースを伝えた時に、なぜか当方宛に不平不満の声が多数寄せられて難儀した記憶もある(苦い笑い)。そして同時に「ああ、少なくとも喫煙者は間違いなく離れていくな」という不安も。日本の喫煙者率が現状の数分の一なら、そこまで気にする必要は無かったのかもしれないけれど。


ここが大企業の弱点の一つでもあるんだけど、一度下した決定を即時切り返すと、色々とやっかいな問題が生じることになる。禁煙は一応大義名分もあるから尚更。切り口としては面白いのだけど、社会的批判は受ける可能性も合わせ、現実はなかなか難しいと思う。完全分煙は資金が必要で、それをまかなえるのは大型の直営店位。店内全部喫煙ありありモードっても面白そうではあるのだけど......かつての秋葉原の喫煙コーナーのようなことになるかもしれないな。......ああ、そうか。マクドナルド直営の喫煙「のみ」のコーナーを、完全禁煙のマクドナルドに並列して設置すればいいのか。ってそれは単なる完全分煙か。

ただ、この禁煙施策だけでなく、


など、多種多様な問題点が浮かび上がっている。一つ一つは些細なことかもしれないけれど、それが蓄積されて、堤防の決壊状態となった感は否めない。味の部分も以前触れたように、マーケティング云々で手を抜きコストダウンを優先した結果が露呈してきた雰囲気ではある。内部的問題、外部環境の変化に対応しきれない硬直性......こりゃあ、長期的な戦略観点で抜本的な大鉈を振るわないと、立ち直りは難しいかもしれない。


※要事実確認のため1ツイートを留保しました

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このページは、不破雷蔵が2014年11月26日 07:47に書いた記事です。

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