寛容さは大切だけど「ねつ造に寛容な社会」など要らないよね

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 「夢の細胞」をめぐる一連の騒動は一体、何だったのか―。26日、理化学研究所の調査委員会は小保方晴子(おぼかた・はるこ)氏(31)による捏造(ねつぞう)をあらためて認定し、STAP細胞がなかったことはほぼ確実とした。前代未聞の不正に社会は揺れ続け厳しい目が向けられたが、寛容さが失われた今の時代の断面が表出したとみる識者もいる。


文芸評論家の山崎行太郎(やまざき・こうたろう)さんは「まだ誰もやっていない成果を追い求めるのが科学者。断罪するようなことは絶対に良くない」と小保方氏を擁護。一連の騒動が、寛容さを失っていく社会の風潮を象徴しているように見えてならないと振り返った。



事実上当事者たる女史のねつ造の繰り返しで生成された「虚像の細胞」であることが確定したSTAP細胞問題。多くの被害者を出し、無駄にリソースを浪費させ、さらに多数の可能性を遅延させ、失わせたにも関わらず、当事者にはその罪の意識が無いという状況は、ある意味異常ですらある。当事者女史は個人的にはいわゆる「サークルクラッシャー」的な精神構造の持ち主ではないのかなあ、そちら方面の分析も必要なんじゃないかとは思うけど、それはさておき。

今件の共同通信社の記事展開には、大いに疑問符を呈せざるを得ない。あくまでも「●×」という意見もあるという、自己の主張を他人に語らせて、引用という形を用いて主張する、よくある「代理主張」的なスタイルをとってはいるのだけど、内容的には「世の中が寛容でないからバッシングが起きている。この風潮は良くない」とするもの。

もちろん前半では当事者への批判、さらには不正をすぐには見抜けなかったことへの批評も語られているけれど、それと「世の中が寛容でないからバッシングが起きている。この風潮は良くない」なる意見を併記することで、あたかも両サイドの考えが肩を並べている、同じようなポジションにあるとの誤解を招かせる。あるいはそう判断した上での記事展開なのかもしれない。

でもこの手法、例の「美味しんぼ」の編集部の見解の手法と同じで、悪辣な切り口以外の何者でもない。なぜ捏造したことを批判し糾弾することが「寛容ではない」として否定されねばならないのか、寛容な社会とはねつ造すら肯定する世の中なのか。「持ち上げて叩き落とす云々」とあるが、それはまさに今件記事を展開している報道各紙の所業・リードによるものであり、それの責任を世間一般にさりげなく転嫁しているのではないか。


直後に最終報告書に関する概要をまとめておくけれど、実状的には上記の通りで、該当女史一人を部屋の中に配して、その部屋に向かって「この中に真犯人がいます」的な状態。他の方面に責任が無いわけではないけれど、もっとも最初に、そして大きな責任を負い、成したことへの対応を求められるのは、当事者女史に他ならない。その流れを「寛容な社会が」として判官びいき的な動きに走るのは、愚の骨頂でしかないわけで。寛容な社会どころかむしろ「ばっくれれば勝ち」的な、よくない風潮へ誘導しかねない。


「追い込み過ぎは良くない」とする意見もあるけれど、必要と思われる対応すら成さずにある状況を放置するのはいかがなものだろうか。むしろ報道の仕方が今件の共同通信の事例にもあるように穏やかにしか見えない部分が多分にあるのは、最初の持ち上げを報道サイド側が行っていたことから、追い込みをすると自らにも火の粉がかぶるから、という下種な勘繰りまでしてしまう......というのは当方だけだろうか。

カンニングをして連続してテストで100点を取り、学校から賞も受けた。しかしカンニングがバレて、これまでの優秀な成績はすべてカンニングの所業であることが暴露されてしまった。これまでカンニングを見抜けなかった先生、さらには他の生徒にも責任はあるかもしれないが、一番最初に、そして重いペナルティを受けねばならないのは、カンニングをした生徒自身。その生徒が「自分はカンニングしてません」「100点は、とったんです」「つい袖の下に公式や化学記号のメモを書いちゃいました」と主張し続け、カンニングを認めない状況が許容されるべきなのか否か。そしてそれを非難する周囲に対し「寛容な社会が」と押しとどめようとする意見がいかなるものか。

そしてそのような論調を載せる通信社自身の資質は。

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このページは、不破雷蔵が2014年12月28日 07:55に書いた記事です。

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