雑誌掲載後に単行本化されない可能性と、読者側の「雑誌」か「単行本待ち」かの判断と

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多分にケースバイケースの部分もあるけれど、漫画家先生諸氏のビジネスモデル(......という表現はアレだけど)は作家側から見た場合、雑誌掲載時の原稿料では経費すら出せない場合が多い。その後雑誌掲載分がまとめられて単行本化され、その印税で損益分岐点を超していく、重版されれば益が出るし、アニメ化、関連商品化されれば少なくとも金銭面ではハッピーパラダイスというのが大よその仕組み。電子書籍・ウェブ漫画の浸透や、雑誌市場の低迷、出版業界の低迷などで、この辺りのパワーバランスも色々と変化が生じてきた。

四コマ漫画コミックでは以前から多分に、連載が終わっても単行本化されないという話は見聞きしていたのだけれど、通常のコミック雑誌でもその類の事案が増えている。以前はとりあえず連載分は単行本化するってのが常ではあったけど、雑誌社も余裕がなくなってきて、単行本化も果たさないことも多々出てきた。で、今件では連載開始前から、コミック化されるかどうかが分からないという話が公知されたという話。公知されないだけで、こんな感じの話は結構あるんじゃないかな。単行本化の確約無しで連載スタートって様式。

読者の立場では非常にこれは悩ましい状況。雑誌はかさばるので単行本待ちという人も多い。で、その単行本が「単行本待ちだから雑誌はホールド」ってことで雑誌を買わず、アンケートにもその「読みたい」が反映されないと、単行本そのものが出ないってことになる。見方を変えると、単行本で読みたい人は、雑誌を買ってアンケートを書いて出すことが保険になる。何だか正しいような、どこか歪んでいるような。

だからこそ、最後の部分にある、「雑誌分の金額を私の自腹でお返ししたいぐらい」ってのも良くわかる。単行本派にとっては「雑誌と単行本でだぶってしまった」的なことになるのだから。


意気込みはすごくよくわかるし、その内情も理解できるのだけれど、現実的に返金部分は無理だと思う。返本制度の問題もあるし、ビジネスそのものが成り立たなくなる。むしろ雑誌掲載時点での購入者にはプラスとなる、あるいは雑誌と単行本の双方を持つと特典が生じるような仕組み、アイディアが必要かもしれない。いやそもそも、雑誌を買わないと単行本が出ないってこと自体、どこか根本的な問題があるようにも思えるのだけど(だからこそのウェブ漫画的なプラットフォームが登場してるのかなあ、という感もあるけど)。

現在の掲載スタイルでも、毎号の掲載分の直後にファンページやオマケ的な項目があり、それは単行本には収録されないってパターンがある。また、同人誌では即売会・頒布会や、特定の本屋で予約購入すると、特別なブックカバーや小冊子、ペーパーの類が付くこともある。この辺りの発想をもとに、あとは関係者が頭をひねって、新しい仕組みを作る必要があるんじゃないかなあ、と。

雑誌掲載時に応募券をつけておいて、単行本添付の応募券と合わせて送ると、抽選で何か特典が得られるとか。雑誌社レベルでは結構あるけれど、作品単位で行うのもありかもしれない。雑誌掲載時と単行本発売時で結構間が開いてしまうので、その辺りが問題になるのだろうけど。

あるいは逆に、紙媒体としての単行本が出ないのは、多分に刷ったけれど売れ残ってしまった的なリスクが問題なのだから、「紙媒体の単行本が出せない判定が出ちゃったけど、電子書籍版は出ますよ」的なラインを新たに設けてもいいのかもしれないな。

うん、まぁ、このあたりは色々と考える余地はありそうだ。

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この記事について

このページは、不破雷蔵が2015年1月22日 08:00に書いた記事です。

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