チュニジアの博物館襲撃の被害者と、その病院に「突撃」した朝日新聞と、手記の発表と

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先日発生したチュニジアの首都チュニスの博物館で発生した事件。背景が色々と複雑な状況にあることもあわせ、物議をかもし、日本でも注目を集めている。日本人観光客も犠牲になっているし。それだから、というのもあるのだろうけど、負傷して入院している方に対し、現地の朝日新聞記者が「突撃取材」を敢行......しようとし、現地大使館の制止を受けたという話。それだけなら表ざたになることはなかったのだろうれけど、負傷者自身がその時の状況も含めた手記を書き連ね、複数報道機関に(恐らくは)同時に公開した、その手記に「突撃」した記者の所属が明記されていたことで、ちょっとした物議をかもしている。

手記は全文が公開されているのでそれを読んでほしいのだけれど(プレスリリース化されていれば全文引用も出来たのだけれどね)、【「親近感を持たせるため」という大義名分のもとに繰り返されるプライバシーの暴露】などでも言及している、メディア側の無神経で高圧的、対象者への配慮もかなぐり捨てた取材ぶり、それに応えることを義務だと思っていた、思わされていた状況での辛いインタビュー、そしてそれが単なる思い過ごしでしかなく、断る権利があると語られた時の解放感がじわじわと伝わってくる。メディアスクラムという言葉が改めて理解できる話ではある。一応【魚拓】は採っておいた方がいいね。


結局漏洩した当本人も処罰を受ける事になってしまったのだけれど、先日の沖縄の米軍基地での抗議行動の状況をとらえた映像の話と、構図はちょっぴり似ている気がする。自分自身は取材される、その実態を暴露されることはありえないという、従来の前提で傍若無人に振る舞っていたら、その実態が意外な形で世の中に明らかにされてしまったことで、色々な実態が不特定多数の人に知られるようになり、「為すべきこと」をしていなかった人たちが慌てているという感じ。


先日の旅券周りの話や【想いの通りにならないと地べたにへばりついて駄々をこねる子供のような...「批判自粛が広がっている」とジャーナリストや知識人が会見】でも何度か言及し、疑問を呈しているのだけど、問題行動をやらかしている報道関係って、多分に報道を高貴で偉大で絶対権益で不可侵なものと誤認している感があるのだよね。一部には確かにその観点で間違っていないところもあるけれど、だからこそ慎重にていねいに扱わねばならないもので、それを傍若無人に振り回して良いものでは無い。

それを繰り返しているから、報道という名のエクスカリバーは刃がナマクラになり、エクスカリパー状態になってしまっている。そしてそれを受ける人達には色々な盾が、鎧が装備されるようになった。さらには反撃の手段も得られるようになった。にもかかわらず相変わらず振り回し続けているので、色々と粗が目立つようになった。そんな気がする。


未遂に終わったけれど「突撃取材」を敢行して大きなトラウマを与えたかもしれない記者が所属する朝日新聞は、その実名を名指しされたことを受け、その部局長が説明とお詫びの文言を呈している。ああ、こちらも【魚拓をとっておこう】

ただこの取材も指摘の通り、謝罪になっているとは言い難く、むしろ言い訳に近しいものがある。よく言われる「ヘイポーの謝罪文」レベルでしかない。

それに今件の謝罪文では、取材を敢行しようとした該当記者の実名公開が無い。読者がより詳しい状況の精査を行うためには、該当記者の過去の経歴を知ることも欠かせない。どのような背景を、考えを持ち、記事をこれまで書き連ね、その結果今件のような「突撃取材」を成したのか。「親近感を持たせるため」には必要なのですよね、実名が。

やや蛇足になるけれど、今件の「手記」はプレスリリースこそなかったものの(共同通信社経由で多新聞社に回ったのかな)、複数メディアに向けて同時に流された感じ。自身に新聞社ほどの情報発信能力が無いと認識した上で、受信相手を複数に、同時に行うことで、一部受け手が内容を改ざんしたり都合の良いように解釈することが無いようにするとの考えでは良策。「吉田調書」事件があったばかりだからねえ。

情報メディアは、読者の目は、情報への意識は大きく変わりつつある。前世紀の姿勢のままで行動を続けていたのでは、歯車がかみ合わなくなる。その変わりつつある空気を読もう。まさに「KY」、だね。

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このページは、不破雷蔵が2015年3月23日 07:46に書いた記事です。

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