ひと頃は広告などで盛んに目にした「江戸しぐさ」。『三省堂国語辞典』でも、いったんは項目を立てようとしていました。ところが、資料を調べる段階で、そのような習慣があったという主張に信頼性は薄いと判断されました。項目は見送りになりました。 pic.twitter.com/fwYYiSR8CN
— 飯間浩明 (@IIMA_Hiroaki) 2015, 4月 17
じきに日本教育近代史において色々と物議をかもすであろう、ガセ歴史というか捏造歴史の代表事案「江戸しぐさ」。「三省堂国語辞典」でも一時期は項目を立てて解説する可能性があったのだけれど、裏付けの調査過程で該当文献が無いことが判明し、却下という内輪話。民間伝承としてすら古い文献が無い。
「江戸しぐさ」の古い文献が見つからないと書きましたが、これは戦前とかの話ですらなく、実に1980年代以前のものが見当たらないのですね。写真は1986年の「古本」ですが、1冊読んでも江戸しぐさの詳細は分からず、肩すかしでした。 pic.twitter.com/8uOW0oz9YE
— 飯間浩明 (@IIMA_Hiroaki) 2015, 4月 17
「参考文献が1980年代より前にさかのぼれない」というのがポイント。そりゃあそれ以前に存在してなければ、文献もあるはずはない。
大事なご指摘です。「一時期デマとして広がったことば」を記録する辞書はあっていいと思います。『三国』は「この先も広く長く使われることば」を載せたいので、その方針には合いませんでした。@SatoshiMasutani: 江戸しぐさで項目を立てて「デマ」と定義すればよいのではないかと。
— 飯間浩明 (@IIMA_Hiroaki) 2015, 4月 17
「三省堂国語辞典」ではその性質に合わないとのことで見送られたけれど、一般社会に広まったデマや流言、流行語などをまとめて編纂し、一つに体系化するのは、社会文化の保全という観点では非常に興味深い話に違いない。口頭伝承では多分にボタンのかけ違いが生じるからね。
語られている作法を浸透させるために、江戸時代の人達を投影させること自身は悪いことでは無い。ただ、それを歴史改ざんをしてまで行い、嘘を浸透させるというのは、絶対にやってはいけないこと。先行記事の「Japan Patriots News」とやってることは同じ。何度か繰り返しているけれど、そこまで江戸時代に投影する形でマナーを普及させたいのなら、最初からフェイクな世界観だと分かる「銀魂」なり「NARUTO」なりを使う(後者は江戸っぽくないか)、あるいはそれに近い世界観を自作して「フィクションです」とアピールした上で浸透させればよい。誰もドラえもんやポケモン、妖怪ウォッチの映画を「実際に日本で起きたことだ」と思う人などいない。
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