ADBの融資枠拡大とAIIBに「協力するけどADBの融資基準は変えないよ」との話

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ADB=アジア開発銀行の年次総会が2日から始まり、中尾総裁は記者会見で、アジア地域での膨大なインフラ需要に応えるため融資枠を今の1.5倍に拡大するとともに、中国が設立を提唱するAIIB=アジアインフラ投資銀行とも協力していく考えを示しました。


また、中尾総裁はアジアインフラ投資銀行について「新たな銀行の設立は理解できるし、歓迎する」と述べ、今後、協調融資などで双方が協力することが重要だという考えを示しました。一方で、「協力するにしても今の融資基準を変えるつもりはない」と述べ、協調融資を行う場合でも審査の透明性や環境対策など厳しい基準で対応するという考えを示しました。


日本の国際協力機構(JICA)と、国際金融機関であるアジア開発銀行(ADB)が協調融資などで協力する枠組みも創設する。中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)に対抗し、日本としての取り組みをアピールする狙いとみられる。


ADBに関してAIIB絡みでちょいと動きがあったので、合わせて覚え書き。まずは以前から言及していた「AIIBに参加する位ならその資金をADBにぶち込めばいいだけの話。融資枠拡大すりゃいいじゃん」的な話が現実味を帯びてきた。

今のところ報道のみで公式なリリースでは無いのだけど、ADBとしては融資枠の1.5倍への拡大に加え、AIIBを理解・歓迎すると見解を示す一方、「共同融資などの協力姿勢を取ることも考慮する」が「その協力をする場合もADBが従来から持つ融資基準を変更するつもりはない」としている。これ結構重要。要はADBとAIIBが共同して融資を行うような事案があるとしても、それはADBの厳しい基準にそったものでなければならないってこと。AIIBの基準では融資できるけれど、ADBの厳しい基準では融資できないような事案の場合、共同融資はありえないという話になる。見方を変えると、ADBの基準にはマッチしているけれど、融資枠が足りない場合、AIIBも共同して融資してもいいよ、でもADBの融資基準を下げることはしないよ、というもの(逆のアプローチの場合があっても、ADBの基準に合わなければ「参加しない」って判断が下されるだけ)。

で、もう一つ、読売で伝えられている方の話は、ADBと日本の国際協力機構が連携する仕組みを作り、間接的に融資枠をさらに拡大しようというもの。「人材の交流や融資を審査する情報の共有などを進め、協調融資にも取り組む」とあるので、融資基準も結局はADBの厳しいラインがベースとなるんだろう。これも以前からちらほら語られてきた話ではある。

元々言われてきたこと、用意されていたものの焼き直し感は強いけれど、ともあれこれで日本がAIIBに参加する理由は全く無くなったことになる。「バスに乗り遅れるな!」って話とはおさらば。もちろん外交的なカードとして「AIIBに参加しようかなー、どうしようかなー、でもなー」的な姿勢を見せ続けることは賢い手口に違いなく、ほとんどゼロに近いコストでかなり威力を持つ切り札になる。中身は無くても、ね。

AIIB絡みの話は、多分に色々な意味でのリトマス試験紙になる、とは何度となく語っている話。今件報道や発表を受けて、今後どのような動きが成されるか、色々と注目したいところではある。

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このページは、不破雷蔵が2015年5月 4日 07:46に書いた記事です。

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