最近多忙なので書いておりませんでしたが、今一度。基本、あらゆるコンテンツは予算によって維持されております(あなたが好きな無料コンテンツも、どこかから必ず金が出ております)。財源は様々ですが、基本は書籍やDVD等の売り上げですので、ご理解いただけると幸いです。
— 小太刀右京(公開) (@u_kodachi) 2015, 5月 11
先日の【ライター稼業のギャラが安くなっているという話】に絡んだ話。インターネット系のビジネスは、いわゆる無料ビジネス的なものが浸透していることもあり、そこで歯車のかみ合わせに問題が生じたのか、「無料で提供されているものは無料で作成されている、空から降ってくる」的な発想を明確に、あるいは深層心理に刻んでいる人が少なくない。少し前に流行った「お刺身はそのままの姿で海を泳いでいる」「お米は工場の巨大な機械から自動生成される」「野菜はカット野菜の姿のままで木に成っている」的なネタだが事実だか分からないような、第一次産業の実態を知らない子供達の話を、21世紀版としてアレンジしたような感じ。
コンテンツはたとえ自動生成されているものですら、何らかの工程が生じる。そしてその工程にはコストがかかる。空から降ってくるわけでは無い。そこには誰かの手が加わっている。仕組みの維持も必要となる。そして財源は多種多様。大まかな範囲でお金の勘定をしているので、この部分は無料だけど、連なる別の部分で回収するとかってのは良くある話(プリンターの本体とインクリボンとかね)。
情報要素の大きいコンテンツは、基本的には書籍やDVDなどの物理媒体のメディアの売上となる。まぁ将来的には別ルートでの売上を柱に出来ればいいのだろうし、メディアを巧みに使いこなし、しかも運が良く波に乗れた人はネット界隈の売上で十分コンテンツを回せる余力を得られているけれど。
要は売上、お金ってのは、作り手側にとってのエネルギーに他ならないからね。エネルギーが充填されなければガス欠となる。だから間接的には売上になるような行動をするのは、投資行動でもある......ってのは繰り返して説明した通り。
「ライターの価格破壊」で思い出すのは、ある名画座の特集上映で知り合った謎の男。新しいレーベルを立ち上げるにあたりムック本を作りたいからと「春日さんに5000字くらい書いて欲しい」と。原稿料を聞いたら「金は出せないけど経験にはなるでしょう」だと。こちらは既に本を二冊出してるのに。
— 春日太一@役者は一日にしてならず発売中! (@tkasuga1977) 2015, 5月 12
もちろん断ったけど、その方はその後、俺のあることないこと吹聴してると耳にした。仕事しても損、断っても損。そういう害悪しかない人間がいることをその時に初めて知った。以来、所属や経歴がハッキリしない人とは一切コンタクトとらないようにしている。この界隈、そういう手合いが多いからなあ......
— 春日太一@役者は一日にしてならず発売中! (@tkasuga1977) 2015, 5月 12
けっこう多いですよ。特に映画界隈は。自分の意見を公で発表したくてウズウズしてる人も多いでしょうし、著名人の名前とかを利用しながらそこを突いてくる狡猾な人間はゴロゴロ。 RT @Kirokuro: ライターの世界にもやりがい搾取ってあるんですね。
— 春日太一@役者は一日にしてならず発売中! (@tkasuga1977) 2015, 5月 12
ただ、「ライターの価格破壊」問題で一つだけ言えるのは。自分がお仕事をさせていただいている大手メディアはいずれも、かなりの原稿料をくださっています。しかも、多くの媒体が次世代の書き手を探している。なので、食っていくためにはそこを目指すのが一つの道だと思います。
— 春日太一@役者は一日にしてならず発売中! (@tkasuga1977) 2015, 5月 12
未来設計をしてないと潰れるだけですわな RT @tomicatomica: 無名だからまずはノーギャラで原稿を書くしかないと思っている人は、依頼主(媒体)がちゃんと稼げる未来に繋がる修行の場なのか、あるいは永遠に安くこき使われる搾取の沼なのかということを冷静に判断する必要が・・・
— 春日太一@役者は一日にしてならず発売中! (@tkasuga1977) 2015, 5月 12
自分の場合、恵まれていたのは壁にぶつかる度に誰かしらの百戦錬磨のベテラン編集者さんたちが手を差し伸べてくださって、いろいろとアドバイスをいただけたこと。彼らから薫陶いただいた「出版業界での生き抜き方」の数々があるおかげで、今なんとか生きながらえていられるわけで。
— 春日太一@役者は一日にしてならず発売中! (@tkasuga1977) 2015, 5月 12
何度か書いたけど、自分が仕事を受ける時の基本ベースは丹波哲郎いうところの「金編」「義理編」「芸術編」。金=「さすがにこの額なら断れない」「本業の宣伝になる」、義理=「この人と仕事したい」「この人からの頼みは断れない」、芸術=「この企画はぜひやりたい」。
どれでもないのは断る、と。
— 春日太一@役者は一日にしてならず発売中! (@tkasuga1977) 2015, 5月 12
フリーランスの場合、極端すぎるくらいハッキリとした将来プランと価値基準を持っていないと平気で潰されると思う。一つだけいえるのは、自分のことをちゃんと「人間」として見てくれる相手としか仕事をしちゃいけないということ。フリーの最大の強みは(生活を我慢すれば)仕事を選べることなので。
— 春日太一@役者は一日にしてならず発売中! (@tkasuga1977) 2015, 5月 12
同人誌だとか災害被災者救済のチャリティならまだしも、プロに対して商業出版物の仕事を「ただでやってくれ」と要求する奴は、絶対に信じちゃだめ。根本的に常識ない奴だから、きっと他にもトラブル起こすよ。 https://t.co/y1ZQOPKKuO
— 山本弘 (@hirorin0015) 2015, 5月 12
ただ、消費者にしても、制作現場にしても、支払い対価は少ない方が良い。自分の懐は痛まないし、成果にもなる。それだけコスパの良いコンテンツを入手できたわけだから。だから深い考えが出来ないと、すさまじい値切りをしたり、上記のように何か別の特典っぽいのをちらつかせて、無料で相応のコンテンツをゲットしようとの動きも出てくる。
特にフリー系のクリエイターは、名前を売るために買いたたかれても仕方がないと思いがちだけど、そしてこれは何度となく繰り返している話ではあるけれど、買いたたきをされてしまうと、「その程度の作り手」との認識しかされなくなる。腕があればいつかはちゃんと評価してくれるさ、と思うかもしれないけれど、そのような技能を持つ買い手なら、それが企業側でも消費者側でも、当初から相応の対価を支払っている。「最初はタダでもいいな」とクリエイターを認識した時点で、創作物への物差しがその程度しかないことを表している。
特に「自分のことをちゃんと「人間」として見てくれる相手としか仕事をしちゃいけない」ってのは大切よ、ホント。ダメな場合はとことんダメだから。企業単位の場合もあるし、担当当事者の場合もあるけれど。
安西水丸さんが生前、「この仕事は絵が上手いとか下手とかいう以上に、『この人ともう1度一緒に仕事をしたい』と思ってもらえるかどうかが大事」とおっしゃってました。素敵な方でしたね。
— シャーロットお猿ダイアナ (@rafcocc) 2015, 5月 13
以前、派遣会社の担当の方から「能力もそうですが、それよりもこの人と一緒に働きたいと思ってもらえる人はスムーズに決まります」という話を聞いたのを思い出した。
— eri (@eri_erim) 2015, 5月 13
支払い対価周りとは幾分話が外れるかもしれないけれど、対価による評価もあわせ、相手に「もう一度仕事をしたい」と思わせる姿勢、態度ってのは大切だよね。これ、商品とかサービスとかウェブ構築でも同じ。もう一度買いたい、もう一度使いたい、もう一度閲覧したい。要はリピーターになりたいと思わせるか、思えるか。
まぁ、上記で挙げたような「タダでコンテンツゲットだぜ」的な考えを持つサイドでは、そもそも使い捨てでクリエイター側を使うことを想っているんだろうから、「もう一度」なんてのはさほど思っていないだろうし、相手にそう思わせるような姿勢は示す必要は無いと考えているのかもしれないけれどね。
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