@azukiglg @suika_sheep 青空文庫ですらサーバの老朽化&メンテナンスする人員不在で困っているくらいですから、知の共有もタダじゃ出来ないってことですね。
— seitarofujita (@seitarofujita) 2015, 5月 16
出口案はないではないんですよね。電子化のコストを「著者自身が負担する」覚悟が問われるのかな、とは思う QT @seitarofujita: @suika_sheep 青空文庫ですらサーバの老朽化&メンテナンスする人員不在で困っているくらいですから、知の共有もタダじゃ出来ないってこ
— 「超」怖い話 怪顧【加藤AZUKI】 (@azukiglg) 2015, 5月 16
昨今では紙媒体の書籍を手掛ける作業でも多分に電子化が進んでいるので、単純にPDF化するだけならあまり手間をかけずに紙媒体版と電子版を連動する形で刊行できる。もちろん電子書籍版を専用のツールで読ませたり、電子書籍ならではの見せ方をしようとすると、それなりに手間がかかるけれど。
ただ、完全フリーでネット界隈に放り投げ、もう誰でもいいから共有してねってのならともかく、版元などががっつりと保全し配信し続けるためには、それこそネットゲームの管理運営のようなメンテコストが発生する。言われている通り「知の共有」はただでは無い(このあたり、最近問題視されている「フリーライド」的な考えを持つ人は理解していない感が強い)。
で、慈善事業なり公的機関の仕組みで無い限り、コストが売り上げを上回ってしまえば、人はそれを続けることが難しくなる。技術だけならすでに構築されている。なぜ難しい状況なのかといえば、それは採算が取れないから。
旧刊絶版の電子化が進まない最大の理由は、出版社にとって「再編集版の負担(支出)の回収の見込みが小さい」こと。これは編集、構成、組版、その他、著者以外の様々な人の権利と労働のコストが掛かってくるから。
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そこを解消するために掛かるコスト(スターティングコスト)を誰が負担するのか?っていう話でもうずっと足踏みしてる。
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これは指摘されてはっ、となる人も多いだろうし、いわゆる「自炊」をしている人はおぼろげながらに理解しているとは思うけど。これから刊行される書籍はともかく、過去の書籍について電子化が進まないのは、その作業に投入するリソースに対し、対価が望めないから。ぶっちゃけると「儲からないどころか損をするから」。
例えば、僕がファイナライズしたDTPのマスターデータを持ってる本の場合、絶版になってても編集済み(9割程度)のデータから電子版を作ってリリースすることは、そんなに大きな負担ではないとは思う。思うけど、それをやっちゃうと、それがスタンダードになっちゃう。
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大多数の作家さんは、原稿をテキストやワードなどで納品したあと、編集や組版作業は別のワーカーに委ねてるわけで、そのコスト(作業済みデータ)はもうその時点で「作家個人のもの」とはちょっと言い難い。
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そういうコストをもう一度、作家個人が全部負担して組版までやって......というのが、「将来はスタンダードになる」と、2010年頃には言われてました。5年経ったけど大して変わってる気はしない。
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紙書籍の電子化は、作業工程によって掛かってくるコスト(手間暇)が違うのでなんとも断定的なことは言えないんだけど、校正済みマスターデータが電子データの状態で存在しているのであれば、頑張れば原価10万前後で電子化できる。
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ただこれは、作業者にかなり無理を聞かせた数字なので、実際に「報酬としておかしくない金額」を設定すると、だいたい20~30万くらいにはなる。その数字になっちゃったとき、「そんなに出ない」となれば単価を上げざるを得ないし、紙の本より高い電子版てなったらますます売れないしなあ。
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例えば、
「猥褻風俗史」http://t.co/HL9WZsH3aU http://t.co/bquRQWC5VV
「奇態流行史」http://t.co/Qyo1UdsQ7i http://t.co/Z8wqhRJPXH
これはどちらも580円で出してる。
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頁数で言うと奇態流行史は190頁近くあって、猥褻風俗史は40頁前後なので、値段敵には猥褻風俗史のほうが5倍くらい高いことになるんだけど、一方で奇態流行史はOCR+修正でデータ化を行い、猥褻風俗史はOCR不可だったので全部目視打ち込み。つまり、電子化コストは猥褻風俗史のほうが高い。
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完成品だけ見ると、どちらも「リフロー(スキャンではない)テキスト電子書籍」なんだけど、その状態にするまでに掛かるコストが段違いに違うわけで。
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「電子組版されてない書籍」或いは、
「電子組版されて作られたが、DTPマスターデータが喪失している書籍」ってのは、テキストデータを作り直すところからめっちゃくちゃ金と手間が掛かる。
「めっちゃくちゃ」と言いつつ、実際には100万は掛からない。
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それこそ、5桁万円から6桁万円くらいだと思うけど、そのコストを電子版で回収できる道筋が立たないうちは、冒険は難しいだろなとは思うのだった。
— 「超」怖い話 怪顧【加藤AZUKI】 (@azukiglg) 2015, 5月 16
それこそ、著者は「つまらない本が売れなかった」なら自己責任だけど、依頼されて作業する校正、デザイン、編集諸作業なんかの場合は、「作業に発生する報酬」は、自己責任で売れない本に関わったら貰えない、ってわけにはいかないからなあ。
— 「超」怖い話 怪顧【加藤AZUKI】 (@azukiglg) 2015, 5月 16
ある程度デジタル化されている原稿でもそれなりに手間がかかればコストは発生する。ましてや紙ベースでの原稿ならどこまでかかるのだろうか、下手をするともう一度ゼロから本を作り直すぐらい!? みたいな。
「依頼されて作業する校正、デザイン、編集諸作業なんかの場合は、「作業に発生する報酬」は、自己責任で売れない本に関わったら貰えない、ってわけにはいかないからなあ」とあるけれど、(今はどうなってるかは知らないけれど)携帯電話関連のコンテンツではそれに近いことがまかり通っていた時代があった。アプリの実制作のコストは、そのアプリの運用で得られた売り上げの何%をロイヤリティの形で云々ってやつね。コストそのものの定額支払いとは別にならいいんだけど、定額支払い部分がゼロ、あるいは殆ど無しって感じのもある。説明に曰く「アプリの人気が出るか否かは出来栄え次第なんだから、作り手側にも責任を負ってもらう必要がある」。今から考えてみれば、それは企画する側の問題とかプロモーションの良し悪しも多分にあるから、制作にのみ責任を丸投げってのはどうなのよ、とか思うのだけど。
著者は通常、「売れたら売れただけ貰える」けど、校正、デザイン、編集(本によっては装画や挿絵、写真も)は買い切りになるから、「本が売れなかったとしても報酬は支払わないとならない」し、「本が馬鹿売れしてもボーナスは付かない」んだよね。
— 「超」怖い話 怪顧【加藤AZUKI】 (@azukiglg) 2015, 5月 16
ちなみに2015年3月末までの合計で言うと、猥褻風俗史72冊、奇態流行史135冊で、奇態流行史のDL数がほぼダブルスコア。
ただこれは、奇態流行史は「平易で読みやすい」「僕がやたら繰り返し引用紹介してる」「18禁ではない」などのアドバンテージがあるので、単純比較はしにくい。
— 「超」怖い話 怪顧【加藤AZUKI】 (@azukiglg) 2015, 5月 16
発行時期で言うと、
猥褻風俗史 2013/12/25
奇態流行史 2014/5/27
で、半年くらい奇態流行史が後なんだけど、「繰り返し引き合いに出す」という周知効果はやっぱ大きいと思う。
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猥褻風俗史は資料本としての性格が強いのと、宮武外骨が「当局の目」を恐れて図版をほぼまったく使ってないこと、明治44年刊で表記が複雑で読みにくい、などあってあんまり引用しないのも理由としてあるかもしれん。
— 「超」怖い話 怪顧【加藤AZUKI】 (@azukiglg) 2015, 5月 16
頒価500円の電子書籍を70%のロイヤリティで出して、
1冊の上がりが350円、
300人に売れると105000円で、これでなんとか制作費を「原価」ではなく「報酬」として支払える予備段階に入れる。
3000人に売れると105万円になるので、商売として成立する余地が見えてくる。
— 「超」怖い話 怪顧【加藤AZUKI】 (@azukiglg) 2015, 5月 16
電子書籍は「著者以外の作業従事者」に報酬が支払えて、なおかつそれを専業にできる人が現れて安定的な市場を維持していけるようになるまでは、「誰かに無理を強いた危うい状況下で進んでる段階」と言わざるを得ない。
— 「超」怖い話 怪顧【加藤AZUKI】 (@azukiglg) 2015, 5月 16
これから出る新刊については概ね解消されてると思うけど、電子化なんて想定されてなかった時代に出た本の「サルベージ」には、電子書籍市場全般の規模の拡大(せめてあと二桁)が進まないと難しいかなー、という気はする。
— 「超」怖い話 怪顧【加藤AZUKI】 (@azukiglg) 2015, 5月 16
ロイヤリティ比率が違うから比べるのは乱暴だけど、ハードカバーの本なんかも「初版3000部」ってのが、「著者にちゃんとお支払いできる下限」だと言いますね。文庫だと1万部くらい。 QT @suika_sheep: @azukiglg
初版3000部の法則!
なるほど!
c⌒っ*゚ー
— 「超」怖い話 怪顧【加藤AZUKI】 (@azukiglg) 2015, 5月 16
でもあんまり部数が少ない本は、著者の取り分が小さくなっても編集費制作費の圧縮には限度ってもんがあるから、どうしてもそこが負担になる。
電子版にも編集制作費は不要ってわけにはいかないから......とまあ、話はぐるぐる回るんですよこれが。
— 「超」怖い話 怪顧【加藤AZUKI】 (@azukiglg) 2015, 5月 16
竹の子書房のKindle本全体では、一番数が出たのは
「なぜ絶版本は電子書籍になりにくいのか?」http://t.co/BOIDAeikpW
で、327冊。99円なので大した上がりになりません。
— 「超」怖い話 怪顧【加藤AZUKI】 (@azukiglg) 2015, 5月 16
「煙管の作法とパイプのメソッド」http://t.co/5i8CllOQFq
は246冊で、これは2013/6/26の刊行以来今も毎週ちょこちょこ出続けてるロングテールになってるけど、そういう「流行に囚われず、宣伝しなくてもある程度動く」というコンテンツ以外は電子書籍は厳しい。
— 「超」怖い話 怪顧【加藤AZUKI】 (@azukiglg) 2015, 5月 16
「それを幾らで欲しいか?」と「それを自分で作ったとしたら幾らで売りたいか?」を訊ねる教育って大事っすね QT @suika_sheep: @azukiglg
価格考察はある意味パンドラの箱ですが、義務教育に組み込んだ時に、重商主義政策の国にとってはデメリットよりメリットの方がで
— 「超」怖い話 怪顧【加藤AZUKI】 (@azukiglg) 2015, 5月 16
電子書籍の話となると、未来的な可能性のきらびやかさとか、時折登場する大成功事例がよく目に留まるけれど、上記説明を読めば分かる通り、大抵は大変なことになる。これも多分に携帯電話のアプリ市場に近い部分があるのだけど、要は損益分岐点が低く、当たりハズレが大きいってこと。一度歯車が回り始めれば儲けの勾配が大きいのでボンガボンガ儲けられるけれど、大抵はそこまで達する事ができずにジリ貧となる。
一方で個人ベースならともかく企業単位、業界単位で考えると、儲けが出そうなものだけを電子化するってのは色々と問題が生じてくる。ましてや二度手間でリスクが大きい、旧来の書籍を電子化するとなれば、という感じ。
この辺りは例えば、公的機関が版権を買い取り、公金で電子化を果たし、元の権利所有者と利益を折半する的な感じにするってような、電子書籍化を促進する仕組みが必要な気がするのだけどね。例の絶版マンガ図書館も一つのモデルとして注目すべきだろうし。
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