「じゃあ安い人に代えて」に見る人員と人材との違い

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あくまでもこれは一例で、フェイクなり一部話を持った可能性も否定できないけれど、似たような話は実体験......というかリアルで見聞きした話も含め、いくつも知っているので、恐らく単独の特異的な事案ではないはず。まぁ、統計データとして取得されることはない類のものではあるのだけど。以前の【駅売店などの出版物販売動向をグラフ化してみる】でも解説している、駅売店の動向が好例だね。素早い客裁きが出来るプロのパートの人の人件費を削減するために解雇をして新人を入れたら、経費は削減出来たけど客がさばけないので商品回転率や売り上げが落ちる。効率を上げるために利用端末の改良をしたけれど、それでも客離れが止まらない......で、雑誌離れも畳み掛ける形で生じ、結局コンビニに任せた方がいいやって状況になりつつある。

これって以前【ネット上のコンテンツは作るの簡単だし無料配信多いから原稿料もどんどん下がるよ、やったね、書き手が増えるよ......良くないよ】で触れた件と構造的には似ている。要は人材を単なるパーツ、人員としてしか考えてない。あるいはネジでもいいかも。人数で穴埋めできればいいや、という程度。「じゃあ安い人に代えて」とのセリフは「安い人で同じ労働リソースが得られる」と考えている、つまり人数でしか就業者を考えていないってのを露呈したと同じ。

その方法論はデフレ時代なら何とか通った、むしろ利益拡大につながったんだよね。賃金据え置き、むしろ下げてもいい、嫌なら別の人を雇うまで。どのみちうちを解雇されても別の場所に就業できるのは難しいから、うちにいるしかないんだろ? みたいな。それが出来たので、パワーバランス的には経営側の圧倒的な有利状況だった。

しかし今は就労環境・労働力の需給関係が大きく変化しているんだよね。今はようやくデフレから抜け出して、人手不足の状態に。同じ「人数」は得られるかもしれないけれど、質は確実に落ちる。かくして職場は上手く廻らなくなる。経営陣は「なぜ業績が落ちる」と首を傾げる次第。どこかで聞いたような感じ。

「同程度、あるいは高い質の人材を取得したくても袖が振れない」との話もある。ケースバイケースではあるけれど、周辺環境に変化が生じている以上、袖を振れるように変化が求められていることを意味していると受け取った方が良い。無理に抑え込んだままで、数字上に算出されにくい「人の好意」や「社会的倫理観」に期待する分を増やしていくと(例えばボランティアで賄うとか、介護業界のように社会的価値を前面に押し出してしまうとか)、士気の低下は必ず起きるし、臨界点を超えれば一気に瓦解するのがオチなんだよなあ......。

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「同程度、あるいは高い質の人材を取得したくても袖が振れない」と言うのは、その会社のビジネスモデルが既に破綻している現れではないでしょうか。業務上の必要性が出ているのにも、そのコスト負担を出来るだけの利ざやを得られていないとうことなのですから。

中国だとそういう会社に付き合ってもメリットゼロなので、言った瞬間さっくりと(労働者側から)切られちゃいます。まさに脱兎の如し(笑)

日本は労働人口の流動性が低めな上に、日本というドメスティックな地域に淀んでいるのでそうはいかないのかもしれません。ただ、若い人中心に海外に出て行くケースは増えているので、労働市場の臨界点突破は近いんじゃないでしょうかね。

激しく同意です

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このページは、不破雷蔵が2015年6月 8日 07:08に書いた記事です。

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