しかし、日本の鉄道車両が「燃えない」ということについて偏執狂的こだわりを見せているのは、それなりに理由があるんですよね。連ツイします。
— びーちぇ提督は中毒患者(作家椿) (@meganex_or_lucy) 2015, 6月 30
先日発生した新幹線内の「事件」。報道内容云々はまた別にくくるとして、鉄道周りの技術的な話について、後で必要があれば精査する時の材料として。伝えられる限りでは、あの条件でどうしてあの程度の損失で済んだのか、疑問に感じていたんだけど......なるほど感のある解説。
事の発端は、終戦直後の桜木町。戦時急造品で粗悪な品質だった電車で火災が発生。木造であること、窓が(硝子をけちるために)小さかったこと、今では常識となった非常用のドアを手動で開く装置もなかったこと、色んな事が災いして、とんでもない人数が亡くなってるんです。
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で、「兎に角電車で木造はダメだ。あとドアや窓から逃げられるようにしなければダメだ」と学びます。今の電車は、特急用や新幹線用を除いて、実は基本的に窓が開くようになってます。これは単なる換気用ではなく、非常用の脱出経路も兼ねてるんです。
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普通はこれで終わりますが、まだまだ悲劇(惨劇)は続く。金属製、内装はプラスチック、これなら大丈夫だろっていう国鉄の自信作「10系客車」が使われていた急行列車の食堂車で火災が発生。当時のマニュアルでは「火災発生時は兎に角止まれ」ってなってたので止まりましたが、これもまた悲劇の序章
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プラスチックが燃え上がり、有毒ガスがトンネル内に立ちこめ、脱出できてもばたばたと人が倒れていく、そんな地獄絵図が表れます。国鉄は「もうこうなったらどうあがいても燃えないようにしてやる」と意固地になり、「どう燃えるのか」を実際車両を燃やしてまで実験します。
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そして、マニュアルも改訂されます。「地下鉄と青函トンネルを除き、火災が発生したら絶対にトンネルからは脱出しろ」と。また、食堂車は電気調理が基本になります。燃える物をとことん排除していくのです。木から金属へ、プラスチックは難燃性の物へ。
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これで安心、と思っていたら、地下鉄で火災が発生。それまでの「難燃性」の基準そのものが覆され、一般常識では考えられないレベルでの「難燃性」が基本になります。ガスバーナーで炙っても燃えないというんだから驚きですよ。
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また、地下(もしくは長大トンネル)を走るときは、電車の前後からも脱出出来るようにせねばならない、と法律も変わります。今の電車に、別に車両を増減させるわけでもないのに、基本的に電車の全面に扉が付いてるのは、脱出経路なんですよ。
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あと、通勤電車の長手椅子、あれは非常時にはハシゴになるようになっています。
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これで安心かと思ったらまだまだ。韓国での地下鉄火災(放火)の影響で、「難燃性」ですらダメってなります。「難燃性でも有毒ガスが発生したらダメ」と。「最近の電車は蛍光灯にカバー付いてなくて安っぽい」って思う人もたまにいると思いますが、カバーが燃えたときにガスが発生するからなのです。
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また、日本の鉄道車両の床材は、リノリウムではなく塩ビを使うのが基本となっていました。「リノリウムは燃えたら危ない」とかいうもう頭おかしいって思えるくらいの「基準」があるからなんですよ。
— びーちぇ提督は中毒患者(作家椿) (@meganex_or_lucy) 2015, 6月 30
今回の新幹線放火があれだけの被害で食い止められた理由の一つに、強力な車両の難燃対策があるわけだけど、それも西成線事故や桜木町事故、北陸トンネル事故など過去の事故を教訓として「改善」させてきた結晶なんだよね。思考停止せずに「どうすればいいか」を考えてきた人々の積み重ねあってこそ。
— akoustam (@akoustam) 2015, 6月 30
安全は多様な経験と知恵の積み重ねで得られている。一朝一夕で成される、空から降ってくるものでは無い。インフラをはじめとした日常生活を支える物事は得てして、普段は見えない部分、過去からのつらなりの結果として生み出されている。それを改めて認識できる話。
本来ならば報道なりがこの類の話をして、不特定多数の読者に対して周知すべき様な事案ではあるんだけど......まぁ、それではインパクトが弱いしバッシングの際のエネルギーも得にくいので、容易な方向に走りやすいよね。
事件の内容そのものに関しては、容疑者自身が亡くなっているので事情聴取は不可能だから、今後は周辺各所からの捜査次第ということになる。一部衝動的なものか、計画的なものか、認知症の類のものか......事前に準備をしているわけだから、突発性のものではないのだろうけど。
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