公共事業は金儲けに過ぎると逆に問題になる

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これは以前に何度か触れた記憶がある話。そもそも論として公共事業とは何なのかを思い返すと、ああ、なるほどその通りってことになる。要は、公的機関が行う公共事業ってのは概して、それ単独を商業的にそろばん勘定すると赤が出るものが多いけれど、もっと高い目線で、社会全体の便益として認識すると、金銭的には勘定しにくいけれど便益となりうるものだったりする。社会保険医療、教育、防衛、いくらでも例が挙がる。で、それらに携わる人たち、必要な素材を無料で収奪するわけにはいかないので、リソースを確保するのが税金って次第。

件のCなんちゃらに図書館の運営を任せたらぐだぐだになったのも、要はこの点の認識が欠けていたから。金儲けの観点で、金儲けで考えちゃいけないことの運用をしてしまったので、問題が生じている。さらにいえば、金儲けのために図書館的な運用をするのなら、該当民間企業で独自に行えばいいわけで、そこに公的リソースを投入するのは、本末転倒以外の何ものでもない。単に「本を売ったり買ったりしているし、なんか似ているっぽいし、本の扱いには慣れているはずだから、図書館業務任せても大丈夫そうだよね」位の思惑しかなかったんだろう。

でも観ている方向がまったく別のものだらか、破綻するのも当然の話。先の「財務省レベルでは財務の健全化が最優先事項だけど、それをも包括する上のレベルに当たる国家運営の視点では、経済の堅調化がより優先度が高い」のと構造的には似ている。


加えて。容易に黒字化できるもので、かつ社会構造の維持発展に貢献する事業は、公的機関が囲いまくると民業の圧迫につながりうる。容易に黒字が出うるものでも、公的にやらないといけない類のものも結構あるけどね。全体としては黒字でも、全国に類似サービスを浸透させるためには、公的な手で行わないと、すぐに赤字部分がざくざくと削られてしまい、不便を被る筋が出てくる。最後の指摘が、非常に良い例だよね。意志策定・決定・行動の物差しが営利にある以上、それが最優先されると、短期的、金銭的なものが前面に出てしまい、そうでないもの、理屈的には間違っていないけど数量化しにくいもの、中長期でないと結果が出にくいものは後回しされてしまう。

短期的には結果が出ても、中長期的にはマイナスとなる場合が多い。そして大よそその状況回復は不可能だったり、本来必要だった何倍ものコストが要求されることになる。

図書館の件は、かつて「ハコモノ」という言い回しで一律小ばかにする形で糾弾のネタにしかならなかった、公的事業の存在意義、有り方を再認識させる一つのきっかけに......なるといいんだけどね。無論All or Nothingではないから、例えば南海の孤島に高さ数百メートルの高層居住ビルを建てようってのが、必要か否か、限られたリソースの中で配分する対象とすべきか否かって事を考えれば、不必要でしかないってのは誰もが理解できるけれども。

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このページは、不破雷蔵が2015年10月 7日 07:59に書いた記事です。

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