「火浦功なんていないんです!」という話のソースをたどってみたら

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SF系の小説が多い文筆家、火浦功氏に関して、「実は火浦功という人物はおらず、イメージ的な存在。複数の人物がゴーストライターとして活躍していた」のような話がちらりとネット上に挙がった。まぁ元々謎が多い人物であるし、執筆している作品もそういう話が好きそうなものが多いから。ある意味、この類の話が出る事自体、当人にとっては誉れなのかもしれない。

で、一連の噂話の一次ソースとして挙げられていた元をたどると、

読者の皆さんも、うすうす感づいているとは思いますが、出版界のタブーを破って、あえて暴露します。火浦功なんて作家は存在しないんです!彼は1980年代前半に、下北沢で飲んでいた当時のSF作家の面々が酔いにまかせて「こんなSF作家がいたりして・・・」とおもしろ半分にでっち上げた、架空のSF作家です。

という寄稿文の引用。それがあちこちに広まった次第。

んで、上のツイート引用の後半部分にて指摘の通り、噂話として広まった一次ソースって、実は一部分しか抽出されていない。全文はリンク先にあるけれど、実はこれ、ネタ的な創作話、まぁよくある業界内のうちわネタ的な、暴露話のように思わせて書いた架空話(一部はマジネタもあるんだろうけど)でしかない。それが分かるのが、同じ一次ソース内にある次の文章。

グラビアや対談など、火浦功の写真が雑誌に掲載される場合は、役者さんを使わずに、専門のコンピューターグラフィックチームが火浦功を合成していました。今にして思えば、1980年代に、まったくリアルな人間に見えるCGというのは、どれほどの技術だったのか恐れ入ります。

......まぁ、そういうこと。とり・みき先生などがよく書く、ありそうでなさそうな世界観をそのまま文章化したまでの話でしかない。例のテレビCM風に表現すると「火浦功はいなかったんだという話はなかったんだ」的な。代役を立てたってことぐらいはあるかもしれないけどね。その辺は本人のみが知っているってことでいいんじゃないかな。少なくとも1980年代にあのリアルさでCGを構築できていたのだとしたら、そちらの方が大ニュースだよ(笑)。

今件は時代の変遷とともに情報の一部分のみ、あるいは背景部分がざくっと欠損した状態で複製され、異なる情報として展開されてしまう、という事例として、ちょっと記憶・記録しておいた方がいいかな、という気はする。

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この記事について

このページは、不破雷蔵が2015年10月10日 08:11に書いた記事です。

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