「焼き増し」の言葉が分からない、なるほど納得その理由

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これまでにも何度か言及してきた、社会環境、生活様式、日常で用いられる用品の急激な変化に伴い、これまでごく普通に使われてきた言葉の語源そのものが日常から消え去り、失われてしまい、世代間のギャップが加速度的に生じるようになっている。先日のテレビ画面とスマホのタッチパネルの違い、タチパネ世代の登場などが好例(【テレビをスマホのように扱おうとするタチパネ世代の話】)。

写真のネガフィルムを元に紙焼きの写真を複製することを焼き増しといい、そこから転じてマスターのデータなり造型を複製してコピーを作ることも焼き増しと表現することがある。保存しておいた画像データを元に紙にプリントする場合なんかもね。

でもそもそも論としてネガフィルムを現像に出して紙焼きの写真として仕上げてもらった経験の無い人は、写真はデジカメによるものとしてしか認識が無い。なにしろ見たことが無いのだから。写真は元々画像データでそれがメイン、物理的な写真はプリントアウトされたものに過ぎない。撮影周りの利用実態がそうなっているのだから、写真は、カメラはこんな仕組みでスタイルでとの認識をされて当然の話。

先日の文部科学省発表のリリースによる、慣用句の意味の変化にもあるけれど、言葉の由来が廃れてしまうと、本来の意味も分からずに使うようになり、そこから色々と変化が生じることになる。「焼き増し」という言葉もそろそろ(あるいは既に)その本来の意味が廃れ、ひとり歩きをしはじめているのかもしれない。

ちなみに磁気テープの類は劣化が激しいので、保全をしておきたいのならば今すぐにデジタル化することをお薦めする。下手すると再生すら叶わない状態になるかもしれない。


当方も書庫を探せば、その類の資料は実物として出てくるかもしれない。価値が、いや意味があるか否かが分からないので、時間があればサルベージしてもいいかなあ、という気がする程度のものだけど。三脚は未だにデジカメに取りつけて使っているけどね。二代目のを。


「焼き増し」を知らないってのは結構よくあるケースのようで、当方のお気に入りの漫画の一つ「箱入りドロップス」にも似たような描写は出てくる。もっともこれは主人公の一人、雫さんが元々超箱入りなので、もとより世間一般の常識をあまり知らなかったってのも一因なんだけど。まぁ、カメラ本体を焼いても増えるわけではないってのは事実に違いない(笑)。そして今なら焼き増ししてというよりは、コピーして、と聞く方が普通なんだろうな。

今後スマホで写真を撮るのがメジャーになると、焼き増しは何と呼ぶようになるんだろう。データコピー......いや、転送して、になるのかな。あるいはそれも含めてLINEしてとかDMしてとかになるのかもしれない。「さっき撮った写真、後で俺にもツイッターでDMして」みたいに。

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このページは、不破雷蔵が2015年10月12日 08:40に書いた記事です。

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