実物品なら限定の割引セールでは品切れ等で仕方ない、数量限定だからとの諦め感もあるけれど、電子書籍等のデータ販売でセールによる安売りを一度目にしてしまうと、定価の価格には手を出しにくくなる。電子書籍の割引セールは短期はともかく中長期的な視点ではマイナスになるのかもしれません。
— 不破雷蔵(懐中時計) (@Fuwarin) 2015, 10月 25
これは以前も似たような話をした記憶もあるのだけど、先日某社で自分の好きな漫画家先生の作品が割引セールをしていて、ちらほらとそのラインアップを観たり、そのセールス絡みでのやりとりをネット界隈で精査していた時に気になった、頭にふわふわと浮かんできた話。
閉店セールとか賞味期限間近とか、新商品入荷のための棚整理の理由、旧バージョンのため。理由は色々とあるけれど、実物品、物理的存在のある商品の場合、その理由によって割引セールが生じるのは仕方がない。また、そのセールス対象となった商品の在庫が底をつき、品切れとなった時、「無くなったからもう自分は買えないけど、仕方がないよね。無い袖は振れないし、現品限りだし」とあきらめがつく。
でも、電子書籍ってそうじゃないよね。むしろそうじゃないのがメリットなんだよね。
デジタルデータによる販売だから、品切れは論理的にありえない。まぁ、新商品への差し換えのために売り切り大セールっていうパターンはありえるかも、と思ったのだけど、それも結局旧商品の在庫を切らすための在庫処分セールなわけで、在庫そのものが存在しない電子書籍なら必要が無い。
と、なると、在庫管理のための値下げは、電子書籍では本来不必要ってことになる。つまり電子書籍の一時的な値下げ、セールスは、客引き、続編まで継続購読してもらうための呼び水的な意味合いががっつりと強いものとなる。
のだけれど。一度値下げを経験してしまった利用者は、定価での購入のモチベーションが下がる気がするんだよね。実商品における購入よりも。何しろ品切れはないのだから、そしてそれが無いと死んでしまう的な必需品ではないのだから(趣味趣向品として調達要望が高いコアなファン向けのアイテムはともかく、多くの人にとっては少々興味を引いた作品で、よければ買おうかな程度の動機でしかない)、今回安くなければ次回まで待ち、あるいは別の作品でいいやってことが増えてきかねない。
容易な値下げは自分自身の価値を下げかねないって話も以前した気がするのだけど、その悪手を電子書籍は四方八方に打っているのかもしれないなあ、という危惧がちょっぴりとあったりする。まぁ、その悪手を自覚しながら、今はとにかく電子書籍のプラットフォーム所有者・利用者を増やすのが先だ、的な考えなら話は別なんだけどね。ただ、その後にその思惑を抱いていた人達が想定している「紙媒体の雑誌のように定価でどんどん購入してくれる」優良客がどれだけいるか......。
音楽CDから音楽データの売買に需要・市場がシフトした際に生じた、手元に購入データが山ほどありすぐにランダムアクセスできるので、お腹いっぱいになった現象とか、一定期間読み放題サービスの普及による単品購入性向の激減とか。似たような状況が起きそうな気がする。
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