ここ数年で、連載の継続を決める最重要案件が、「人気アンケート」から「1巻の初速売り上げ」にシフトしてきました。なので、お気に入りの漫画があれば、発売後すぐに買ったほうが、その作品が連載継続する確率が高まります。・・関係ないけど「終末の天気」1巻、11月6日発売です。
— ヤングマガジンのスズキ (@ym_suzuki) 2015, 11月 4
もちろん2巻以降も常に「初速売り上げ」が重視されます。今はどの作品も、初めは少なめに刷って、初速が良ければ重版、悪ければ打ち切りの危機って感じの厳しい時代なのです。・・『ホクサイと飯さえあれば』②巻は11月6日発売です!
— ヤングマガジンのスズキ (@ym_suzuki) 2015, 11月 4
本当にぶっちゃけていうと、アンケートは初版部数を決めるひとつの材料に過ぎないので、SNSでバズっていただいたり、Amazonなどのレビューを書いていただいたりしたほうが、今の世の中ではその作品を応援する効果が高いと思います。もちろんアンケートやファンレターもありがたいですが。
— ヤングマガジンのスズキ (@ym_suzuki) 2015, 11月 4
これも結局のところ出版社や編集部、さらには編集担当や漫画そのものの状況・条件によりけりでケースバイケースなところが多分にあるのだけど、類似の話はあちこちで見聞きしているので、一つの大勢的な考え方として知っておいた方がよいかもしれないな、というもの。元々単行本の第一巻の売れ行き次第でその漫画の命運が決まるって話はあったけれど、そのウェイトが以前より高まってきたのかな、という雰囲気はある。だからこそ、その加速が付くためには、色々な情報が流れて周知がされることが望ましいってのが「SNSでバズって」云々につながっている。ただここではよく言われる「アマゾンで買うな、地元の本屋で買え」的な話は出てこない。
見方を変えると、漫画雑誌って雑誌そのもののセールスと単行本のセールス、その二つが支えていたようなものだけど(細かいことをいうと他にも色々あるけど省略)、そのうち雑誌の売れ行きが落ちてきているので、ますます単行本のセールスへのウェイトが挙がってきたのかな、との解釈もできる。それならば、掲載時にはビジネス上への期待があまりできないウェブ展開でも、単行本化で巻き返せばよいとの判断がしやすくなったとの仮説は道理が通る。要は雑誌が儲かりにくいので、単行本を売るためのプラットフォーム的役割が大きくなった、ならばウェブでやってもあまり変わらないじゃん? むしろネット口コミでの加速効果が期待できるよね、みたいな。
漫画家の言う『買ってくれ』は利益が欲しいっていう意図じゃなくて、続けさせてくれって言う意味合いが9割くらいだとおもう。
実際印税って『何冊売れたから今月何円です』って計算じゃなくて、本が生産された段階で全部入ってくるから、厳密な売上部数はこっちに入ってこないし結構無頓着。
— 赤坂アカ (@akasaka_aka) 2015, 11月 4
ただ電子書籍のデータはきっちり数字で売れた数を突きつけてくるから怖い。
収入より支払い書と振込手数料の方が高くつく事のほうが多いっていう笑い話。
— 赤坂アカ (@akasaka_aka) 2015, 11月 4
本を買う時、新刊コーナーで表紙が見える様に置いてある本、平積みから選ぶじゃないですか
どの本もそうだと思われがちですが、実際あそこに陳列されるのは一握りの売れ筋で1巻が平積みされれば超ラッキー位の激戦区なのです。
表紙すら見て貰う事無く、3巻以内に打ち切られる作品が7割って現実。
— 赤坂アカ (@akasaka_aka) 2015, 11月 4
初速初速っていう話を読者に押し付けるのは良くないけど(好きに買わせろっておもうよわたしも)初速が判断材料として有力というのは揺るぎようがないとも思うわけです
— ササナミ (@sasanami) 2015, 11月 4
書店員の視点で言うと、初回3冊入荷する本があったとする。そのうち2冊も発売初日に売れてしまったら店員はあせる。「この勢いで売れるなら足りなくなってしまうぞ」となるから追加発注をかける。しかし一ヶ月かけて2冊売れたら残った1冊はまあ棚に差されて、これ以上の追加はいいか、となる。
— ササナミ (@sasanami) 2015, 11月 4
昔も今も「単行本を買ってくれ」との創り手側の声は、多分にふところ周りの部分もあるのだろうけど、それは同時に出版社への懐関連にも直結し、それは連載の継続・打ち切りの判断につながるってのは容易に想像ができる。上記で挙げたように、単行本のセールスに係わるウェイトが大きくなれば、出版社側の切る・継続するの判断もシビアになるのも当然の話。稼ぎ所の単行本で稼げないのなら、連載してても意味ないじゃん、アウト、みたいな。某四コマ漫画誌でも「単行本の第二巻は継続するか否かの一つのライン」って話があるけど、あながち冗談でも的外れでも無かったりする。
これらの話って、「だから単行本の第一巻は多少無理でもごりごり買え」との意見には賛否両論だし(欲しくないものまで買わされるのはナニだな)、「アマゾンじゃダメ、書店で無いと意味が無い」的な意見には「なんでやねん」との反発もある。近場に本屋はあった方がいいし、その本屋で購入するのは間接的な投資活動だというのも分かるけれど、アマゾンでの購入の便宜性も合わせて脳内の天秤で測った結果なので、それにまで指図されるのは、的な。
一方で「そっか、初速が大切なんだな」との現状の業界に係わる情報を、読者、ファンに周知させるのは、大変良い事だと思う。何しろ伝えなきゃ知り様がないからね。
「強要はダメ。でも周知させるべき情報」ってのは他にも、例えば電子書籍の割引セールの際に、作家先生に入る印税は「定価計算」「割引価格」のどちらなのか、などがある。実態としては出版社や雑誌単位で違うらしい......けど、公開情報にはなり得ないので、この辺はあくまでも見聞きしたり作家や編集の語りの端々から類推するしかない。また、印税が仮に割引セールの額面通りに割り引かれても、とにかく冊数がさばければ、それが実績となり、「何部売れたから連載継続」的な判断材料になるかも、との考え方もある。
電子書籍の割引と印税に係わる話は、早いうちに業界内統一ルールとその公知をした方がいい気がする。割引計算か定価計算かどちらでもいいし、企業任せでもOKなんだけど、少なくともその選択の明示はしてほしい。作家先生を支援したいと考えた時に、割引セールの時に買うべきか、それとも定価に戻ってから買った方がよいのか、その際の検討材料になるからね。
やや余談になるけど、この類の本、特にコミック系の売上や連載に絡んだ話が良く話題に登るようになった、しかも頻度が増しているように見えるのは
①業界が金銭面でアップアップしている
②SNSの浸透で可視化の進行
③出版社や作家が色々と手探りで模索中
④意識の変化
などが原因なのかな。どれがウェイト高いかは別として。
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