仕事を断ってしまった話。 | 小説家わかつきひかるのブログ - 楽天ブログ https://t.co/zsHoXwpuTv
— さつきは終わらない夏 (@feliachica) 2016, 1月 27
この誓約書をそのまま読むと、トラブルが起こっても誰にも(親にも弁護士や警察にも)相談するなという意味になり、パワハラ宣言に読めてしまいます。(第三者には弁護士や警察も入ります。契約の当事者でないため)
情報の開示の範囲が明示されていないため、口止めが際限なく広いです。双方向ではなく一方的で、作家にのみ責任を負わせる内容です。また、契約の相手方は、編プロの編集者個人でした。これはありえません。契約(誓約書も契約です)は編集者個人とするものではなく、版元の代表者とするものです。
機密保持契約、いわゆるNDA(Non-Disclosure Agreement)と呼ばれるもので、何らかの取引を本格的に行う際には、まず最初に「これからのやりとりはビジネス上の内容が多分に含まれるので、勝手に流用したり第三者に話したら色々と困るのでやっちゃダメよ」との約束事を契約としてしたためたもの。まぁ商慣習的にやらかしをしたら相応のペナルティはあるのだけど、紙の形で契約を結んでおいた方が、その縛りは明確なものとなる。
で、今件はそのNDAの中身があまりにも一方的なもの、作者側に不利な内容だったので、「お断りします」というもの。契約内容とされるもののいくつかは首を傾げるレベルの内容だったたけに(編プロの編集者個人が対象だったとか)、まぁ妥当な対応ではある。そして文中にある「上のレベルの人に話を持ちかける」ってのは、権限の上で問題があると指摘する人もいるだろうけど(「飛び越し」は飛びこされた人のメンツが潰れる可能性がある)、状況次第ではやっても良い手段に違いなく。
「契約書は読みましょう」。これ超重要。個人的感想であり、具体的に市場調査による結果を受けての減給ではないのだけど、どうもネット界隈に係わる媒体に関しては、紙媒体よりもさらに、タガが緩んだ形で出版サイドが対応するケースが少なからずあるような雰囲気が否めない。先に「ウェブ漫画は掲載時は原稿料が無い、無きに等しい。単行本化されて初めて対価が得られる。そういうビジネスモデルだから」ってのも、よく考えてみると描き手側を紙媒体よりも一段下に見た上でのモデルな感はある。展開先が紙であろうとウェブであろうと、描き手側にしてみれば原稿に違いは無く。
ネット界隈から踏み出す人は、ハードルが低いので乱雑な行動をする人もいる。また経験が浅い人が多くなるので、出版業界関係者にしてみれば、低いレベルだと認識されるのかもしれない。どのみち無料のネットから出て来たものだし、紙という物理的存在のものではない、単なるデータの塊でしかない、みたいな。「物理的媒体では無いから軽んじて良い」との深層心理が働いているのは、どこの界隈でも変わらないけれどね(でもテレビやラジオといった電波媒体には敬服するんだよなあ。不思議)。けれども、仕事とお金が動くことには変わりはないのだよね。
大学のサークル活動や文化祭的なノリでやるのなら、そこまでこだわる、気を付ける必要は無い。けれど、自分の技能を活かして仕事にしたい、しっかりとした対価を得たい、創作活動を介して多くの人に笑顔をもたらしたいなどなど、しっかりとした目的意識を持つのなら、契約書の中身はしっかりと読み通し、分からないことは確認をする。文面に書かれていることと別の解釈を語り、後で「言っていたことと違う」と文句を述べても「そんなこと言った記憶はない。書かれていることがすべてだ」と言いくるめられる可能性もあるので、自分で理解できなかったら分かる人、詳しい人に相談をする。分からないことを尋ねるのは何も恥ずかしいことじゃない。学んで自分の知恵とすればよいのだから。
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