「73%がポケモンGO規制に同意」という新聞社世論調査の記事について

| コメント(0)
スマートフォン向けゲームアプリ「ポケモンGO(ゴー)」は各地で人気を集める半面、歩きスマホをする人が増えたり、自動車事故が起きたりするなど社会問題化している。こうしたゲームに「規制を設けるべきだ」は73%に上り、「規制する必要はない」は17%だった。50代以上では「規制を設けるべきだ」が8割を占めた。


圧倒的大多数の利用により社会現象化している「ポケモンGO」。確率論的に当然のことながらイレギュラーやトラブルの類も発生する。むしろ普段からお痛をしやすい人達のあぶり出しになっているのではないかなあ、というのが個人的感想。つまり、「ポケモンGO」で何らかのトラブル、例えば不法侵入やら歩きスマホやら運転中の不注意をしでかす人は、「ポケモンGO」で無くとも同様のリスクを体現化したであろう、それが「ポケモンGO」で表に出たに過ぎないという感じ。

で、その「ポケモンGO」に関しての調査結果として、この類のゲームに規制すべきだ的な意見を述べた人が3/4に登ったという。タイトル、ざっと書かれた本文だけを見ると、結構衝撃的。

ただ、「新聞という報道って、これでいいのかな」って感は強い。まず、どのような前提、設問が成されていたのか、「規制」って何を意味するのか説明があったのか、それとも漠然と単に規制と投げかけただけなのかなど、不明な点は多い。指摘の通り、ノイズに等しい情報が新聞記事として掲載されたと判断されても否定はできない。

記事に書かれているRDSとはRandom DigitSamplingの略でRDDと実質的には同じ。但しこの方式では市外局番・市内局番に乱数を加えて番号を生成してかけるため、原則的には固定電話のみが対象となってしまう。携帯電話も含むのならばその旨が書かれているのがふつう。

固定電話を持たない、世帯に有していない若年層が増えている昨今では、固定電話のみを対象とし、回答を求める調査方式の場合、回答年齢階層に人口構成比を考慮したウェイトバック(割合を人口比に合わせるための比重変更)を行わないと、世間全般とはかけ離れた、高齢者回答に偏った結果が「世間全般の意見」として出てしまう。

このような記事の場合、例えウェブ上のものであっても、年齢階層別の回答数・率や、ウェイトバックの有無を明記しなければ、単なる情報操作的なものと認識されても仕方がない。...というより「報道」に携わる上で、その心構えは必要不可欠。見方を変えれば、本来ならばそれらの配慮はすべて行われているのが報道のはずで、実はそれすら満足に出来ていない品質でしかなかったのが、最近の失態で暴露されてしまい、読者が疑心暗鬼になっているというのが実態。加えて、固定電話と携帯電話の利用状況が、かつてと今では大きく異なっているのも一因。


固定電話の利用率・数の減退に伴い、スマホに対するRDDの試みもなされているけれど、逆に高齢者が反映されにくくなるとか、コストが割高になるとか、回答率そのものが下がるとの点が指摘されている。固定電話が世帯代表の窓口なのに対し、スマホなどの携帯電話の場合は個人のプライバシーに直接ノックするようなものであり、従来のRDDと同じ様式では問題があるからね。突然直接知らない人からスマホに電話がかかってきたら、いたずら電話と認識されても仕方がない。普通は出ないし。しかも就業・就学中とかは出れないし、ねえ。通勤・通学中も。

今件調査に関しては、「コンピューターで無作為に数字を組み合わせて作った電話番号」とあるので「もしかしたら最初から携帯電話の番号も入っているかも」と考えたのだけど、「福島第1原発事故で帰還困難区域などに指定されている市町村の電話番号は除いた」とあるので、自動的に固定電話のみと判断できる。携帯電話の番号も混ぜた場合、そのような配慮はできなくなるからね。もしするのなら「固定電話番号においては、福島云々」と記述するはず。

まぁ、若年層向けには例えばインターネットとLINEによる調査を併用するって手もあるんだろうけど。実際、一部代理店ではLINEを用いた調査も始めているようだし。

ともあれ、昔のような「世帯に電話は一台だけ。しかも固定電話」の状況下において有効だった手段を、そのまま現状にまで適用させようとすること自体に無理がある訳で。例えるなら、馬車に対して行っていた調査方法を、自動車所有者に対して同じ方式でやっても、色々と誤差や問題が生じるのは当然の話ということ。

例えば米国の調査機関PewResearhCenterの調査だと、RDD方式で電話インタビューを行っているけれど、固定・携帯双方に対するアプローチを実施していて、しかも比率はすでに携帯の方が上。さらに国勢調査結果を基にしたウェイトバックをかけている。もちろん、設問の類はすべて公開している。

結局、人口推計とか国勢調査の結果を基にした、人口構成比によるウェイトバックを行っています&ウェイトバック前の各年齢階層の回答数は統計上の少数誤差が生じないほどの十分な数です 的なものでないと、色々とぶれが生じてしまう。加えて、設問次第で回答などいくらでも操作できるので、極力その類による変動が生じないような設問を考慮するなり、設問そのものを質問の条件と共に公開するのが筋。「規制」という言葉一つとっても、色々と解釈はできてしまう。

まぁ、そもそも論として、電話を利用したインタビュー形式による世論調査というスタイルそのものが、少なくとも今までの形式では通用しない時代になっているのだろうな。

関連記事             

コメントする

            
Powered by Movable Type 4.27-ja
Garbagenews.com

この記事について

このページは、不破雷蔵が2016年8月 6日 07:45に書いた記事です。

ひとつ前の記事は「高齢者の生活保護が増加しているという話」です。

次の記事は「通信社の信頼性は所属する記者一人一人の品質と、それをたばねる組織の統率力にあるのだけど」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

* * * * * * * * * * * * * *


2021年6月

    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30