「相手を怒らせる質問をするのもテクニック。本音を引き出せるから」と得意がる新聞記者と、ジャーナリズムの本質と

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どうもこの類の話は連鎖反応を生じるケースが多いようで、先日の【「相手を怒らせて語らせるのがジャーナリズム」のもう一つの怖いところ】と類する話がまた新聞記者、しかも朝日新聞から出てきた次第。これ、グラフ化は無理だけど、もう少し時間をかけて本家サイトなどにまとめた方がいいのだろうな。

今件は詳しくは元記事の通りで、インタビューで「えこひいきされたので相手に金を取られた」と質問したら「んなこたぁねーよ、何馬鹿なこと聞いてんだ」と叱責されたというもの。この質問をしたのはどのような記者なのか、伝えられていないのがちょっと残念。

で、この質問に対し、朝日新聞の記者は、良い質問であり、これはテクニックであると誇らしげに語っている。それに対する反応の一つも上げておいたけど、まあかねがね同意。イジメと何ら変わりない。「相手を殴って痛い目に合わせて言うことを聞かせる。これもテクニックの一つ」とかと同じだよなあ......。


相手に不快感を与えて、記者いわくの本音を口から出させることをテクニックとする主張は、そういや報道界隈の話では随分と前からちょくちょく見聞きしているし、当サイトでも数年前から何度か取り上げている。昨日今日の話では無い。それに、相手が不快感を覚えた時に発した言が「本音」であると、誰が断定できるのだろうか。

「心の平衡を失った状態で出てくる言葉を「本音」だとして扱うことにも違和感が強い」とはまさにその通りで、記者のいう「本音」とは記事にし易い、叩きやすい「対象者の口から出た言葉」に過ぎないのだろう。壊されるのがカメラだけならまだ良いのだろうけど。もっともそんなことをしようものなら「報道の自由を侵害した」的な感じで大騒ぎするのだろうけどね。


一連の「怒らせると」の件。どこか既視感を覚えていて、その一つが拷問などによる自白の強要ではあったのだけど(これとて「これ以上我慢していると一層痛めつけられるから嘘でも口にしてしまう」ケースが多々ある)、ブラック企業の圧迫面接でもあったのだな。なるほど。


物理的ではないにせよ相手に強制力を加えて怒らせて「本音」なるものを引き出すのがテクニックだとする件に関する分析としては、この一連のお話がしっくりくる。代替手段的なもので、しかも的外れなものが抽出されてしまうことも多々あったにも関わらず、それが正しいものだとテンプレ化され、伝承されてしまう。しかも狭い業界界隈の中の話なので、外の常識とは隔離され、選民意識もあわせ、「お前ら知らないだろうけどなあ」という鼻高々モードになり、つい口にしてしまう。

「世間の莫迦(ばか)にはわからないだろうけど、自分たちはこの国で数少ない正しい人間だ」ってのは、まったくもってなるほど感のある、報道、特に新聞界隈が抱いている感想なんだろうなあ。ちょっと例を挙げても、「私たち記者は正義」とか、実名報道が無いと記憶に刻み込めないとか、例の軽減税率の際に「新聞は文化、だから税率アップの除外対象」とドヤ顔で主張した辺りとかね。

報道そのもののツールとしての構造や機能云々よりも、その中に居る人達、その人たちで構築される人的システムにこそ、現在の報道の行きづまり感や暴走的なものの原因があるのだろうなあ、と。

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このページは、不破雷蔵が2016年8月13日 08:14に書いた記事です。

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