最近クリエイターの不満的な話がよく発信されているけど、たとえば「印刷会社やデザイナーがリアルに死ぬので作家や編集者は締切や入稿日を守ってください」っていったらみんな守ってくれるかな。
— mot (@anticycle) 2016年11月18日
先の電通による過労死問題をトリガーとしては、再び話が色々と挙がってきた感はある、制作方面、クリエイター各部局における環境の悪さの問題。ソーシャルメディアという情報の流通が容易なツールが普及したのも一因ではあるけど、今までにあまり聞かなかったようなリアルなお話が次々と目に留まる。中にはフェイクやネタや誇張もあり、真偽性の精査が多分に必要な状態ではあるけど、信ぴょう性の高いものだけに限っても、やはりモノづくりを維持拡大させていくためには、その場に足を運びたい、携わりたいと感じさせるだけの対価報酬は欠かせないよね、という感想は否定できない。
で、例えば指摘の通り、印刷会社やデザイナー方面が土日を休めるようにしたら、言い換えれば土日は仕事を受け付けない、自宅持ち込みの仕事もしない、金曜夜発注で月曜朝一仕上げといった「土日仕事前提」のような依頼はしないし、受け付けてくれないのが当たり前となったら。作家や編集者はそれを良しとするのだろうか。
これって先日の、【ロイヤルホストで24時間営業を止める話と過剰サービスとその対価と】でも言及した、サービス業の24時間営業と、それに携わる人たちの問題と、構造は同じなんだよね。
個人的には文句をつける界隈もあるだろうし、不便さを覚える事態も多少は生じるだろうけど、それを許容できるようになれば、「まぁ、こんなもんだろう」という感じになって、その分関係方面は確実にハッピーになる。余力が生じれば心の持ちようも時間の調整も楽になり、リスクも軽減されるし質の向上も期待できる。「もう続けられない」として廃業してしまう可能性も減る。数量化できない分まで、単発ではなく中長期的な面まで考えれば、確実にプラスとなる。
ケースバイケースで、との前提で。当方が体験した時(印刷業者が土日をしっかり休むようになり、締め切りが以前よりもタイトになった)には、入稿が遅い書き手はもりもり切られるという結果になった。土日にツッコミを入れることが不可能になったため、リスクが桁違いに上昇した結果、記事の依頼採用の基準が大きく変化したわけだ。また、万が一穴が開いた時の、予備原の需要も増えた。
「アフターゼロ」(岡崎二郎先生)に収録されている「反撃の負」という作品が、まさにこれを暗示している。負のフィードバックが無ければ正の適正化のみが推し進められ、結局はコントロール不可能な状態にまで増殖してしまう。自分にとって「負」と思えるような部分は、実は他のところでは「正」、さらに自分も含めた一連の流れにおいては「適正」な方向への歩みなのかもしれない。自分が楽なこと、自由なことをしている状況は、下手をすると他の人にそれ以上の苦を強いているかもしれない。そのことを考えるのも必要ではないかな、と。
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