最近よく売れないと終わりますって漫画家の嘆きが拡散されてくるけど、自分も似たようなツイートをしようとしたら担当さんに、そういうのは自分の作品が売れてないって宣伝するような物だから絶対しないでって言われたので、実際悩んでるけど言えない漫画はもっと多いってことだけ知っておいて欲しい。
— きただりょうま✍ (@R_Kitada) 2017年1月5日
これは一つの意見としてのお話ってことで挙がってきたもの。指摘されている通り、編集者や出版社ではなく、書き手側の内輪話的なものとして、単行本は初速販売が大切だとか、単行本が一定量販売されないと続巻が出せないどころか連載も終わってしまうという、そろばん勘定的な話は確かによく目に留まるようになった。そして言われているように、その想いを胸の内に秘めているだけで、公知していない先生方もたくさんいるのだろう。
他方、単行本が出ない≒人気が無い、市場の需要に応えていないのならば、出版社側が単行本の続編を出さない、連載も優先順位を下げるってのは、今に始まった話ではない。アンケートはがきのリアクションの良し悪しも多分に作用するってのは昔から言われていることではあるけど、最近ではその話は強く語られることが無くなってきたのを考えると、
・出版する側の余裕(金銭的なもの、作家の採用枠)が無くなってきて、単行本出版の連載継続の判断基準が厳しくなっている
・ソーシャルメディアの普及浸透でコミュニケーションのハードルが下がり、これまで語られていないような内情が気軽に公知されるようになったので、状況がより認識されるようになった。昔から似たような状態は少なからず生じていた
などが複合的に生じているのではないかな、と。
これ買い手側としては至極当然な感想だけど、売ってる側は「ここが面白いので買って!」「こういうところにこだわってます!」と必死で言いまくってなお売れなかったから「売れないと次が描けないんです」と訴え始めた訳で、難しいですわねほんと https://t.co/77jKKYuejp
— 藤原祐 (@fujiwarayu) 2017年1月5日
「このままでは続きが出ません!」というアピールを快く思わない人がいるのはよくわかる。僕も正直、スマートなやり方ではないとは思う。でも、同じような状況は僕も経験しているので、そうアピールしたくなる気持ちもわかる。読者からの声が直接届きやすい今の時代の弊害でもあるのかなーと。
— 藤原祐 (@fujiwarayu) 2017年1月5日
で、買いたい側、読者側としては、そのような内情的な話が関わってくると、作品を楽しみたいとの観点とはズレを覚えさせるので、首を傾げる面も出てくる。投資的な観点を持っているのなら話は別だけど。
他方、売り手側の「これまでの手法でダメだったから、もっと直接的に、金銭・ビジネスの観点でアピールしている」という説明も一理はあるけど同時に「どうなんだろう」という感も覚える。「具体的に買わないと終わっちゃうよ」という情報公知をするのと「買わないと終わっちまうだろ、買えよ」という、微妙な違いかな。いや、それもまた少し異なるような気がする。情報としては必要だけど、
例えば「単行本の第一巻が5万部売れないと続きが出ないし連載はストップします」という形で具体的な数字と共にアピールがされるようになったら、クラウドファンディングとどこが違うのだろうかなという話になる。それはそれで一つの解決法ではあるのだけど、電子書籍の世界のように、より厳しい二極化が待っている気がする。
今の雑誌業界、特にコミック系業界の苦境は、多分に「読者は紙媒体のみで漫画を読む」「雑誌がお試し版のダイジェスト集的な形で定期的に発刊され、その中で好きな連載を単行本で手に入れて残していて反復して読む」といった、昔の環境下でのビジネスモデルが前提になっているのが原因。その構造が崩れてきたのにも関わらず、新しい、変化をとげる環境に適応しきれていないことから、余力がなくなり、旧来のスタイルでの作品の継続が難しくなっている。
業界内すべてにおいて、一様に変化を求めるのはムリだろうけど、やはり環境に応じた変化をしていく、進化をする必要はあるのだろうし、作家側もその進化をしているプラットフォームに注力をしていく必要もあるのだろうな。
...もっともデジタル系媒体の場合、権威云々はともかく、ビジネスモデル的には二極化しやすいので、より首が締まるケースも多々考えられるのだけど。
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