書店の倒産や休業・解散件数の動向

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深刻な出版不況の中で2016年(1-12月)に倒産した「書店」は25件と、前年比1.5倍増に急増した。ネットメディア浸透やオンライン販売、電子書籍の普及など、市場環境が大きく変化した書店経営の苦境を反映した格好だ。特に、出版業界は、書店だけでなく出版社(製造)、取次会社(流通)など業界全体で厳しい状況が連動しており、抜け出すのは容易でない。

当方の行動領域内でもここ数年で書店が数件無くなったり、新しい運営企業に差し代わったりしているので、印刷業方面の不調ぶりとそれに伴う書店、特に中小書店の苦戦ぶりは容易に理解できる。他方、デパートなどに内包される本屋とか大手チェーン店の書店は、以前と変わらず......というよりむしろ色々と創意工夫をするモチベーションが上がっているようにも見受けられる。具体的な数量比較をしているわけではないのだけどね。

今件の調査結果は書店業界でも中小が厳しいのだなということを改めて実感させてくれる......のだけど、元々の件数が少ないので、どこまでが具体的傾向なのか、それとも統計上のぶれの範囲なのか、判断が難しい。定期的な新陳代謝の可能性もあるので、もっと長期的な動向も知りたいところ(数十年単位で見ると出版業界はこれまでに数度、大きな節目を迎え、その時には色々な数字の変動が生じている)。

むしろ注目したいのはレポートの後半部分。

書店の休廃業・解散件数(年ベース)は、2016年が41件で前年より3件増加した。2011年(23件)を底に年間40件前後で発生し、倒産を上回るペースで推移している。家族経営の小規模事業者を中心に、先行きが展望できないケースや、経営者の高齢化に伴う後継者難などで事業継続を断念するケースも目立つ。また、人口減少やスマホ、ゲーム機の普及など、全国各地で広がる本離れで業績の難しさが増す状況が透けて見える。

個人、あるいは小規模の事業体による小売店が、店主の高齢化などで店を閉め、後を継がせずシャッター街化するという話はよく指摘されているけど、それが書店においても生じているとの話......あー、少なくとも当方が知っている書店でも1件は間違いなくそのパターンだ。

単純に出版不況で書店が倒れる、と表現すれば簡単ではあるけど、それが実情を正しく表しているか否かはまだ別の話。この辺りは出版業界の構造も合わせ、じっくりと精査をするのもアリかもしれない。


ちなみに帝国データバンクでは同様の調査を昨年11月に発表している。まぁこの類は定期的に出てくるのだろうな、と。

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このページは、不破雷蔵が2017年3月 9日 07:27に書いた記事です。

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