「共謀罪法案」と「テロ準備罪法案」と正しく伝える報道の責務と

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報道機関は「分かりやすく、そして正しく伝えること」社会的責務であり、それは報道機関に関わらず他人に意思疎通をする際に必要不可欠な要素の一つである事、そして往々にして「分かりやすいけど正しくない」手口が悪用されており、それに注意しなければならないってことは、何度となく記事にしている通り。昨今話題を集めているテロ準備罪法案において、その話を思い起こさせるような事案があった。

今件は朝日新聞の記事から。他ソースでも確認済みなのでコピペとかコラージュの類では無い。政府が国会に提出した旧「共謀罪」こと「テロ等準備罪」(組織的犯罪処罰法改正案)に関して、すでに新しい名前に変わったにも関わらず、今後も「共謀罪」の名前を使い続けるとの宣言。以前問題視された「ISIL(ISIS)」を「イスラム国」と表現し続けた頑なさを覚える...のと同時に色々と思惑を覚えてしまう。

「テロ等準備罪」という呼称を用いると、「テロ」のイメージがすぐに浮かび、対応しなければとの認識がすぐに分かり、理解は容易くなる。ところが「共謀罪」のままでは何か普通のことでも共謀した時点で処罰されてしまうかもというイメージがあり、不安を覚えさせる(実のところはそんな妙なものではないのだが、少なくとも一部報道界隈などでは、そのような説明をしている)。

イメージを変えさせるのが好ましくない、これまでの印象をクリアされるのが望ましくないのか。それとも単に面倒くさいのか。または一部で成されている戦前の治安維持法との連動性を断ち切られるのが望ましくないのか。あるいは何か不都合でもあるのか。少なくとも正しい言葉の使い方ではない。「テロ等準備罪」(旧「共謀罪」)とか(「共謀罪」から転じたもの)とでも表現すれば問題はないはずなのに。これでは「一部の人にとっては分かりやすいかもしれないが、正しいとは言えない」となってしまう。


念のため主要全国五大紙について直近の表記方法を確認したところ、朝日は主張通り「共謀罪」のままで「テロ等準備罪」の記述は無し。毎日はカテゴリは共謀罪のままだけど、本文やタイトルでは「テロ等準備罪」との表記。読売と産経は「テロ等準備罪」、日経はタイトルでカッコ先の「共謀罪」で本文では「テロ等準備罪」。まぁ、色々とそれぞれの新聞社の立ち位置というか思惑が見えてくる。


指摘されている通り、自分達の勝手都合で間違った名称を使うってのは、少なくとも社会の公器を自称する新聞がやってよいことじゃない。まぁ、見方を変えれば朝日新聞は個人の記者云々のレベルではなく、社全体の体制として「そういうもの」なのだろうなぁ、ということだ。

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このページは、不破雷蔵が2017年3月23日 07:42に書いた記事です。

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