「1人当たり医療費が高くなる理由は、同じ疾患でも入院期間が長かったり、受診する回数や検査などが多かったりすることが挙げられる。」https://t.co/yapaJh8bQB @nikkei →違います。
— 津川友介 (@yusuke_tsugawa) 2017年5月21日
要は「多額の医療費を投入しているのに、それに見合った成果が出ていない。医療費が跳ね上がる原因だから、対策が必要だ」的なお話。登録しないと先が読めないから云々という話もあるのだろうけど、報道という観点では不特定多数が目に通せるレベルの情報で判断するのが一義的なものであり、特定の人しか見えない部分で別の話が展開されている場合、それは報道の大義名分、社会的信義則に反するもので、それはそれで問題となる。まぁ、タイトル部分で「がん死亡、同じ県内で格差 本社調査 医療費の効果、検証必要」と出てるからねえ......。
で、指摘もされているけどこれは【「評判の悪い病院」の良し悪し】でのお話と同じ。相関関係と因果関係が別物であるってことに加え、同じ条件下での比較じゃないよね、ということ。医療費が高いのにがん死亡数が多いのではなく、(治療の結果亡くなってしまうことによる)がん死亡数が多いから医療費がかさんでしまうまでの話。ああこれは、原因と結果が逆転してるのか。
医療費が高いにも関わらず死亡率が高いのではなく、患者が重症だから死亡率が高く、結果的に医療費も高くなってしまう(治療コストがかかるため)だけです。「住民の重症度(もちろん年齢も含む)」が交絡因子になっています。「原因と結果の経済学」を読んで頂ければわかると思います。 https://t.co/DtnD06spNo
— 津川友介 (@yusuke_tsugawa) 2017年5月21日
アメリカでも「医療費の高い地域は逆にアウトカムが悪い」という主張を見ることがありますが、それは明らかに間違いです。複数の医療経済学者とこの議論をしました→同じ地域に注目して医療費をより高くしたら、アウトカムが良くなるか変わらないかのいずれかで、逆に悪くなることはない https://t.co/exqjfVsll6
— 津川友介 (@yusuke_tsugawa) 2017年5月21日
「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法 https://t.co/Sv1kpXtNX6 これか......って書いてるご本人でしたか(汗)
— 不破雷蔵(懐中時計) (@Fuwarin) 2017年5月21日
「原因と結果の経済学」を読んでいただければ云々ってのは自著のことだったのね、という話はさておき。説明されていることがほぼその通りで、先の病院の話と同じ理屈。今件の日経の話も結局、複数のパラメータを見比べないといけないわけで、それを成していないと「無駄遣いしてるから、金をたくさん投下してもがん死亡数が多いんだッ」という主張になってしまう。
まぁ、すべての作用しうるパラメータを見越して、多次元的な観点で物事を見切るってのは難しいから、つい単次元で見てしまいがちなんだけど、下手をすると今件のように奇妙な結果を導いてしまう。経験や多彩な知識でその過ちはある程度チェックできるのだけど、今の新聞社などの報道には、どれほど備わっているのだろうか。全世界は知らんと欲す。
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