「医療費が高いのにがん死亡数が多い、これは無駄だ」との論説を放つ日経新聞

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1人当たりの医療費が高いのに、全国平均と比べてがん死亡数が多い市区町村が全体の3割に上ることが20日、日本経済新聞社の調査で分かった。がん死亡の割合を比較したところ、同じ都道府県内でも市区町村間で大きな格差があった。約40兆円の国民医療費は膨らみ続けており、社会保障の持続可能性を高めるため費用と効果を検証し、地域の特性に合わせた対策が必要になる

要は「多額の医療費を投入しているのに、それに見合った成果が出ていない。医療費が跳ね上がる原因だから、対策が必要だ」的なお話。登録しないと先が読めないから云々という話もあるのだろうけど、報道という観点では不特定多数が目に通せるレベルの情報で判断するのが一義的なものであり、特定の人しか見えない部分で別の話が展開されている場合、それは報道の大義名分、社会的信義則に反するもので、それはそれで問題となる。まぁ、タイトル部分で「がん死亡、同じ県内で格差 本社調査 医療費の効果、検証必要」と出てるからねえ......。

で、指摘もされているけどこれは【「評判の悪い病院」の良し悪し】でのお話と同じ。相関関係と因果関係が別物であるってことに加え、同じ条件下での比較じゃないよね、ということ。医療費が高いのにがん死亡数が多いのではなく、(治療の結果亡くなってしまうことによる)がん死亡数が多いから医療費がかさんでしまうまでの話。ああこれは、原因と結果が逆転してるのか。


「原因と結果の経済学」を読んでいただければ云々ってのは自著のことだったのね、という話はさておき。説明されていることがほぼその通りで、先の病院の話と同じ理屈。今件の日経の話も結局、複数のパラメータを見比べないといけないわけで、それを成していないと「無駄遣いしてるから、金をたくさん投下してもがん死亡数が多いんだッ」という主張になってしまう。

まぁ、すべての作用しうるパラメータを見越して、多次元的な観点で物事を見切るってのは難しいから、つい単次元で見てしまいがちなんだけど、下手をすると今件のように奇妙な結果を導いてしまう。経験や多彩な知識でその過ちはある程度チェックできるのだけど、今の新聞社などの報道には、どれほど備わっているのだろうか。全世界は知らんと欲す。

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このページは、不破雷蔵が2017年5月22日 07:57に書いた記事です。

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