「企業倒産が増えた、人手不足が深刻化した」という報道とその中身

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東京商工リサーチが10日発表した2017年度上半期(4~9月)の企業倒産件数(負債額1000万円以上)は、前年同期比0.1%増の4220件となった。上半期としては9年ぶりの増加。中小企業を中心に人手不足が深刻化する中、求人難による倒産が増えた。

本家サイトで景気ウォッチャー調査の解説をした際に「人手不足云々とあるけど、人材プールが枯渇したのならともかく、雇用市場の変化に伴った適切な対応を求人側がしてないのが多分の問題」「適切以上の待遇を提示し続けることで人材プール、業界そのものが潤沢になる」的な話をした矢先の記事。タイトルで首を傾げ、本文でさらに首を傾げる内容で、配信元が時事だったのでもしかして......と思い、一次ソースを当たって、ああやっぱりね、と。

今件の発表資料は 2017年度上半期(4-9月)の全国企業倒産4,220件 www.tsr-net.co.jp/news/status/half/2017_1st_02.html 。人手不足が深刻化しているとの印象が強いのですが資料の限りでは


・年度上半期の人手不足関連倒産は142件。このうち「求人難」型は前年同月の2.3倍ですが、7件から16件
・9月の人手不足関連倒産は22件(前年同月31件)、3か月連続で前年同月を下回る
・9月に限ると人手不足倒産の内訳は「後継者難」型が16件で最大、「求人難」型が4件、「従業員退職」型が1件、「人件費高騰」型が1件

記事では上半期の「人手不足」による倒産が4220件とも読めてしまいますが、そうではありません。また「人手不足」と一言で包括していますが、実際には中小企業の後継者養成を怠っていたことが多分です。


要は「求職者が求める給与が高過ぎて求人側が払えないから倒産が一杯増えた、インフレは良くない、求職者側は贅沢だ、お前らのせいで倒産が」的な印象があるけど、実のところは求人難による倒産件数はごくわずか。半期区切りでは増えているけど、それも1ケタ2ケタの反意でしかない。

さらに人手不足の中身を見ると、後継者難が大半だったりする。そこから先の話は分からないけど、対象企業のそろばん勘定とか、求人の条件の中身とかも見極める必要がある。要は経営陣がデフレ時代の頭のままで切り替えができずに、環境変化に対応できなかったまでの話かもしれない。だとすればそれは単なる求人難や人件費高騰が原因じゃなくて、経営陣の能力問題とも見る事ができる。


後継者難だって指摘の通り。後釜は早め早めにつばをつけるなり用意しておく必要があるのだし、そのためには色々と準備をしなければならない。それらをしっかりとやった上で、なお後継者難なら問題ではあるけど、準備も何もせずに「何も言わずにさくっと後を継いでくれる人がいない」というのは、単なる経営者の素質不足でしかないのではないかな。

要は人手不足の少なからずは、経営陣の素質に問題があるような。倒産してしまうのも、中には自然淘汰レベルとして仕方が無いってのも無いとは言い切れないような。後を継ぐ子供に色々な庇護を与えず、自分の富を優先するのでは、種が衰えるのも当然の話。ああ、今の高齢層の少なからずの部分の問題と同じだわ。

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このページは、不破雷蔵が2017年10月12日 07:01に書いた記事です。

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