①実質賃金の話。賃金の実情を示すもので、賃金から消費者物価指数を除することで求められる。受け取った金額そのものは名目賃金。名目GDPと実質GDPのような関係。 https://t.co/ZuoRxvdT52
— 不破雷蔵 (@Fuwarin) 2017年10月15日
実質賃金と平均所得・所得中央値と失業率と非正規雇用比率とエンゲル係数。経済動向を勘案する指標としてここ数年多く取り上げられる形となっているけど、解釈がぐだぐだだったりバッシングのネタ的に都合の良い読み方をされるケースが多々あって、こんなのでいいのかなあ、という感じはする。
それに、例えば悪い値が出た時に、それが一時的なものなのか、さらなる悪化の兆しなのかを見極め、良い方向に転じさせるのにはどうすればよいのかを考えるべきなのに、少しでも悪い値が出たら全部ちゃぶ台返し的にひっくり返して誰それは辞めろとかいうのは、モンクレなお客とどこが違うのだろうか、と。
で、実質賃金のお話。もやもやしていたのもあったのだけど、昨日ざっくりとまとめた......というか軽く済ますつもりが数時間かかってしまったまとめ。
②実質賃金が上がってない、むしろ下がってる云々の話ですが、以前から指摘されている通り、「低賃金となる非正規就業者の増加」が若年層のパート・アルバイトと、定期雇用の高齢層が顧問や嘱託などの再就職で生じたから。全体の平均値を算出する場合、低賃金者の割合が増えれば下がるのは当然。
— 不破雷蔵 (@Fuwarin) 2017年10月15日
③労働市場の改善の過程では、まず非正規が増え、それから正規が増えます。これは経済の基本。雇用する側の立場で考えればよく分かりますね。短期的な不足かもしれないと、まずはとりあえずの穴埋め、そして長期的な改善になりそう、あるいは短期の条件では雇えなくなると、長期=正規採用に移行する。
— 不破雷蔵 (@Fuwarin) 2017年10月15日
④この辺りの話は昨年分の中小企業白書のGDP項目別動向〔1〕消費 https://t.co/48kZcaaXJL で見るとよく分かります。「足下の2015年第4四半期では、実質賃金の指数は94.6と低下しているのに対し、雇用者数の指数は103.0と上昇している。」 pic.twitter.com/HaHdyt5NQl
— 不破雷蔵 (@Fuwarin) 2017年10月15日
⑤「実質賃金は足下では持ち直しの動きをみせているものの、水準としては2013年以降低下しているのに対し、雇用者数は2013年以降緩やかな上昇傾向にある。このことから、雇用者報酬の増加は主に雇用者数の増加に起因していることがわかる」
— 不破雷蔵 (@Fuwarin) 2017年10月15日
⑥「実質賃金が減少した背景については、デフレ状況ではなくなりつつあることがうかがえる中で物価が上昇したことと、雇用環境が改善する中で、パートタイム労働者が増えたことが考えられる」
— 不破雷蔵 (@Fuwarin) 2017年10月15日
⑦実際、労働力調査などを見ても、雇用者数は増えていますが、まず非正規が増え、それから正規が増え始めています。正規雇用はすぐに解雇できるわけでは無く、雇用する側も慎重になるのです。先日の世帯年収周りでもお話した「合算上の平均化のワナ」なわけです。
— 不破雷蔵 (@Fuwarin) 2017年10月15日
⑧参照 「20年前に比べて世帯年収の中央値122万円も下がった」という話の中身 https://t.co/LcMsaRN5Wb
— 不破雷蔵 (@Fuwarin) 2017年10月15日
⑨実質賃金の動向は次の通り。年ベースでは2013年から2014年にかけて大きく下げていますが、これは先の説明の通り、非正規雇用者の比率増加によるもの。実質雇用者報酬と雇用者数双方が増加していることから、雇用拡大の中で平均化の上で下がったことがうかがえます。 pic.twitter.com/2AUvhp8ypS
— 不破雷蔵 (@Fuwarin) 2017年10月15日
⑩直近で増加しているのは、ようやく雇用が非正規から正規に増加の主軸が移ってきたこと、非正規でも賃金が増加しているのが要因でしょう。
— 不破雷蔵 (@Fuwarin) 2017年10月15日
⑪四半期単位の動向。かつての高失業率の中での賃金低下ではなく、ここ数年の減少は雇用市場の改善に伴う経過的状況であるのは前述の通り(失業率も猛烈な勢いで下げています)。2017年に入ってから海外要因や金融政策の不足から失速の動きが出ているのが気になりますが。 pic.twitter.com/JgHA7pQtUX
— 不破雷蔵 (@Fuwarin) 2017年10月15日
⑫参考 年齢階層別完全失業率の推移をグラフ化してみる(2017年)(最新) https://t.co/t6z6W1jICy pic.twitter.com/GLK6a6UcCI
— 不破雷蔵 (@Fuwarin) 2017年10月15日
⑬ですので本当は、「実質賃金上がってないだろ」ではなく「勢いが落ちてるぞ、もっと積極的に金融政策、政府主導の需要喚起を成せ」が、語られるべき言葉なのですね。
— 不破雷蔵 (@Fuwarin) 2017年10月15日
⑭ちなみに正規非正規の増減に関しては 人口動向も含めた正規・非正規就業者数などの詳細をグラフ化してみる https://t.co/HBwoNKMI3z 正規・非正規就業者数の詳細をグラフ化してみる https://t.co/1nyvFn3cGh でご確認を。
— 不破雷蔵 (@Fuwarin) 2017年10月15日
⑮また完全失業者では無いが、「仕事をする意思はあるが、求職活動をしなかった」人の動向は 完全失業者に含まれない「仕事はしたいが求職活動はしなかった」人の推移をグラフ化してみる(2017年)(最新) https://t.co/Jn3oQ4k9Ln を。こちらも減少中。 pic.twitter.com/xAeASMcEhL
— 不破雷蔵 (@Fuwarin) 2017年10月15日
要は現状では労働市場構造の変革期にあってその影響が結構出ている、と。あとは平均値の算出によるワナ。構成要素の個々は改善されているケースが多々あるのだけど、全体をまとめて平均化すると、以前より悪くなってしまう、と。
例の「平均賃金を上げたきゃ非正規と低給取りを全員解雇して、高給取りだけ残せばよい」ってやつだな。ばかばかしいけど、これで本当に実質賃金の平均値は底上げされる。でもそれは施策としては間違っているので、より多くの人を就労させる、若年層に多くの就労機会を与える、少しずつ労働市場の環境をよい方向にもっていく、と色々と手をつけて一歩一歩よい方向に歩ませる必要がある。
その行程で統計的にネガティブな数字が出ることもあるわけなんだけど、それは関連する他の指標を見れば分かる...のだけど、あえて見ていないのか、見てもみなかったふりをしているのが、「実質賃金ガー」と騒いでいる人達なのだろうな。
ちなみに今回のお話は、後から考えれば中小企業白書のグラフを延長して現在の数字を反映させればそれで済むのでは? と気が付いた。これは機会があったら試してみたいところではある。
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