「千~3千人か」と「少なくとも1万人」と

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1989年に中国の首都・北京の天安門広場(Tiananmen Square)で民主化運動が軍によって武力弾圧された「天安門事件」の死者が、少なくとも1万人に上るとする英国の公文書が新たに公開された。フランス人の中国研究家ジャンピエール・カベスタン(Jean-Pierre Cabestan)氏は、最近機密解除された米国の文書も類似した死者数を割り出しており、当時の英大使によるこの推定値には信ぴょう性があると述べている。

先日夜半に報じられたAFP電。天安門事件に関わるイギリスの機密文書が期限切れで開示され、その内容を伝えたもの。今件ではAFPが自ら該当文書を確認した上での取材記事となっている。まぁ、1万人をそのまま一人一人カウントしたわけでは無いのだろうけど、数そのものが当時の実態を思い知らせるものではある。中国共産党軍側の被害がそれなりに生じたのも理解はできる。


で、今件報道に絡んで多数のツッコミがあるのだけど。AFPは自ら取材したものを基にしているし、英語の原文では香港紙に掲載されている公開文書そのものへのリンクも貼ってある。それによれば1万人以上とか、学生は手をつないで対抗していたとか、倒れた学生の上を兵員輸送車が何度も行き来していたとかいう形で、随分と生々しい描写がされているのだな。

ところが共同、時事、それらを用いている東京新聞や毎日新聞など(現時点で確認できるのはこれぐらい)では別の香港紙の引用として「千~3千人か」なる表現を使っている。同じ一次ソースを基にした記事のはずなのに、どうしてこれほどまでに数の違いが出て来るのか、そしてそれを不思議に思わないのはなぜなのか。指摘されている通り「報道機関としての能力が決定的に欠けている」、あるいはどこぞへ忖度しているという認識をせざるを得ない。

まぁ、「ぼくらが信じている香港紙がこんな風に伝えたのは事実なんだもん。公文書を調べる必要なんてないじゃん!」と言われれば、そうですかとしか返事のしようがないのだけどね。

こういう話があると「普段から似たようなやり方は日常茶飯事的なものなのだろうなあ」「一次ソースに当たらないと実態がつかめないって、報道の意味がどこにあるのだろう」と感じてしまうのは当方だけだろうか。

今件に関してはソースが同一の英公文書でありながら、AFPは今記事のように「少なくとも1万人」と表記しているものの、時事通信は香港時事報として、共同通信は広州共同報として(東京新聞や毎日新聞も共同伝として)、「千~3千人か」と伝えています。元が同じによる報でありながら、ここまで大きな違いが生じるのも不思議な話です。あるいは今流行りの「忖度」が生じているのかもしれません。


ちなみに英BBCでの同一ソースの報道 Tiananmen Square protest death toll 'was 10,000' www.bbc.com/news/world-asia-china-42465516 、その記事経由で確認できる公文書そのものでは「民間人の死者は少なくとも1万人」との表記で、他にも「学生は手をつないでいた」「倒れた学生の上を装甲車が何度も駆け抜けた」など当時の詳しい描写も確認できます。


一応該当記事にツッコミの解説はしておいたけど。やはり文字数が足りないなあ......。BBCに書かれていた当時の描写をもう少し詳しく説明したいところではある。

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このページは、不破雷蔵が2017年12月24日 07:52に書いた記事です。

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