「景気がよくなっているのに飲食業の倒産が増えている」ということだけど

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東京商工リサーチは、2017年の飲食業の倒産件数(速報値)が前年比19・2%増の762件だったとする調査結果をまとめた。14年以来、3年ぶりの750件超えとなった。仕入れ価格の高騰や人手不足による人件費増加などコスト増のほか、景気実感の乏しさを背景とした個人消費の鈍さが影響したとみられる

昨年ぐらいからちらほらニュース化される人手不足倒産にしても、中身を精査すると分かる範囲の材料からの結果としても、多分に日頃からの準備を怠っていり適切な備えをしていなかったりブラック的な運用が社会の変化を受けて成り立たなくなったりだったりするので、今件のようなタイトルの記事もどうなんだろうなあ、という感があった。

で、中身を見るとやっぱりそれっぽいかなあ、という感は否めない。「景気は良くなってるっていってるけど倒産が増えてるじゃないか」「なので景気は実際に良くなってないよね」的なお話ではあるのだけど。

商工リサーチの該当ニュースを探してみると1/5付の【【2017年(1-12月)】「飲食業」の倒産状況(2017年12月29日現在)】。「仕入価格高騰や人手不足による人件費増加などのコストアップが影響し、さらに、景気実感の乏しさを背景とした個人消費の鈍さが、倒産増加に拍車をかけているとみられる」......って今回の記事、リリースをほぼそのままべた写しで、タイトルだけで煽ってるんかい。

一方でツイートでも挙げている通り、件数は確かに増えてはいるけど、それは前年比とかのレベルの話。負債総額は低水準のままで件数が増えてるってのは、要するに小規模の倒産が増えているということになる。そして景気が安定すればすべての業態が堅調化するという考えが間違い。消費性向は確実に変化しており、既存の業態すべてが押しなべてハッピーになれるとは限らない。また、年齢別人口構成比の変化なども重要な要素。ここ数年居酒屋が低迷を続けているのがよい例だな。人材不足云々ってのは頭に挙げたように、備えて無かったところが淘汰されたまでの話ってケースも多々あるのだろう(今件の数字からだけでは断定できないけど)。

あと、今件は倒産件数のみだけど、実店舗数との比較も必要です。供給過多の可能性もある。極端な例だけど同じ市場に100件あった場合と1000件あった場合とでは、後者の方が当然競争過多で倒産する「件数」は多くなる。ましてや業態全体の動きとして集約化・大型化するとなれば、その過程で数としての倒産件数は増える。


これは失念していたのだけど、景気が良くなったからこそ、いわゆるブラック企業が立ち行かなくなって倒れたという可能性も否定できない。いわゆる環境変化に伴う自然淘汰。この場合、倒産件数の増加は必ずしも悪い事ばかりとは言い切れない。

まぁ、いずれにしても詳細を確認できない事には何とも言えないのだけど。ただ、周辺・関連業界や社会の動きを事前に知っていれば、数字にリンクする物事も推測は可能なのだね。単純に飲食店の破たんが増えた、これは個人消費が落ち込んだに違いないとするのは、いささかこじつけに過ぎる気がする。

個人消費の上下が飲食店での消費に直結連動するとは限らないのだけどね。消費性向が変化した結果の可能性はあるのだし。年齢階層や就業者数の人口構成比とか、その辺りも考慮してみる必要はあると思うよ。

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このページは、不破雷蔵が2018年1月15日 07:45に書いた記事です。

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