電子コミックスの売り上げが紙コミックスを上回ったという話

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出版科学研究所は2月26日、2017年の電子コミックスの推定販売金額が紙のコミックス(単行本)を初めて上回ったと発表した。紙のコミックスが前年比14.4%減の1666億円と大きく落ち込んだのに対し、電子コミックスは同17.2%増の1711億円と成長した。

先日発表された出版科学研究所の出版月報2018年2月号の内容からと思われる話。恐らく紙レベルのプレスリリースではウェブ以上の内容が周知されて、各メディアはそれを基に記事にしたのだろうなあ、というもの。統計を取る場所によって誤差は色々と出てくるのだろうけど、コミックスでも電子が紙を上回るのは時間の問題だったわけで、これは予定調和的な話以上の何物でもない。例えるなら、馬車の時代に自動車が登場し、利用者の点で自動車が馬車を上回ったというところ。


ただ、物理的存在の馬車と自動車との比較と違い、コミックにおける紙と電子との違いは、新刊が主に目につくのか、既刊も新刊同様に目につくのかとの違いとなる。プロ野球ならば常に新人やルーキーとの戦いなのか、歴代の名選手が当時の力を維持したままで対峙してくるかの違い......うーん、FGOみたいなものだと思えばいいかな。時を超えて有力な人たちがライバルになる、的な。

そしてその傾向は既に音源業界で生じている。手元のライブラリに納められた既存の楽曲がすでに個人にとっては最適解であり、それに割り入るほどの魅力を新曲が持っていないと、新たに買われることは無い。それは歌手買いだったり話題の曲だったり友達が聴いているからだったりテレビで薦められたからだったりという動機付けであり、純粋にこの曲がよいからってのは非常にハードルが高くなる。すでにお腹いっぱいだから。「消費」がされないんだよね、データ化されると。検索機能が使えるから。


電子出版のメリットは場所を取らず検索が容易で昔の本もすぐに取り出せる。これはライバルが新刊だけでなく、昔の本も加わった事を意味する。昔の本1冊1冊は大した影響力はないかもしれないけど、それが何年分も、何十年分も対峙してくるわけだからね。ウェブメディア全体としてはすでにその傾向があるけど、それは電子出版物でも変わらない。

良作を生み出す側にとっては、長きにわたり注目される可能性があるわけだから、これほど良い時代はないということになる。他方、新作が売れ難くなるのも事実なので、新しい芽が生え難くなるのも否定できない。少なくとも市場構造が変化していることを正確に認識して、それに対応する施策を採らないと、生き残ることは難しい。最初の例なら、自動車が主に使われるようになった時代で、それでも馬車をメインで輸送業をするのは、よほど工夫をしないと無理だよ、ということ。

まぁ、電子出版、データ化は万能ですべてにおいて優れているかというと、実はそうとも言い難い部分もあるのだけどね...。増えすぎると飽和が早くなる、人のキャパが追い付かなくなるとか、さ。検索機能を充実させてもそれを使いこなせるか否かは別の問題だし、しっかりとしたインデックスがされていないとその検索も使い物にならないから。

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このページは、不破雷蔵が2018年2月27日 08:00に書いた記事です。

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