ちょっと前に「ストリーミングになって音楽の寿命が変わった」という話をツイートしたら、「短くなったでしょう」という反応が多かった。これ、たぶん違います。「商業的に宣伝に乗る、メディアで論評される」期間は短くなっているけれど、「良い楽曲」の寿命は伸び、再生回数も増えている。(続く
— Munechika Nishida (@mnishi41) 2018年5月25日
今件は音楽関連のデータの分析で当方も何度か指摘しているもので、コンテンツそのものの評価と商業的な売り切りとの見方の違いから生じる錯誤だったりする。本や雑誌は購入して読まれた後に捨てられてしまったり、残しておいても何度と無く繰り返し読むって機会があまり無いけど(検索してすぐに手元に戻したり、そもそも存在を忘れてしまいがち)、電子化されたものはすぐに検索して手元に戻し、何度でも楽しめる。
なので自分の音楽端末のライブラリは「自分のお気に入りのステキボックス」となる。その中身が増えていけば、それだけで満足しちゃうから、新たに追加しようという動機は段々とハードルが高くなっていく。レシピ集を自分で編纂していくと、どんどん充実して自分の好きな料理、必要な料理ばかりとなり、そこにさらに加えることへのハードルが高くなるってのと同じ。
これまでの売り切りビジネスでは、そのようなスタイルが使われるようになると、当然売れなくなっていくので「寿命は短くなる」と認識しても仕方が無い。他方、コンテンツそのものの寿命としては、各個人のライブラリに収まっている間は寿命が延びることになる。......ってここまで書いて、このライブラリが買取では無く、インデックスだけが収められたストリーミング形式のものならば、ビジネスとしても寿命が延びたってことになるのだろうなと思ったりする。さらに、特定の人に触れ続けられるのなら、何らかの機会で第三者の目に留まらせるような行為がなされ、それが新たな該当コンテンツとの出会いを生み出すかもしれない。「マンガ図書館Z」で起きているあれこれは、まさにそれなのかも。
聴き放題+プレイリスト再生の効果で、「いいとおもったらとりあえずチェック」するようになり、さらにはのちに「人力もしくは機械によってキュレートされたプレイリスト」で音楽が発掘されるので、全体再生回数は増え、市場拡大効果が生まれる。(続く
— Munechika Nishida (@mnishi41) 2018年5月25日
一方で、最初にピックアップされないとダメなので、知名度の高い人・広告の使い方が上手い人・ソーシャルメディアでの拡散に強い人(たぶんこの順に効果的)の楽曲は回転しやすくなり、いかに「最初のサイクルにのせるか」「その後の回転を増す施策をしかけるか」が重要になる。
— Munechika Nishida (@mnishi41) 2018年5月25日
この辺、物理メディア時代ともダウンロード時代とも異なるサイクルであり、しかも「いいものは何回でも聞く」「時間が経ったものも、折に触れて発掘されて聞かれる」という音楽メディアならではの効果があり、映像・書籍・ゲームともまったく異なる形になります。
— Munechika Nishida (@mnishi41) 2018年5月25日
メディア的な視点だと「寿命は短くなった」ように見えて、商品としての寿命は(一部に限られるが)伸びる、というのが面白い特性。
— Munechika Nishida (@mnishi41) 2018年5月25日
あ、この話、来週のメルマガで詳しくやります。(いまネタを決めた)
ストリーミング時代になると、最終的に「検索で自分の知っている楽曲を探す」という行為はあまり行わなくなる、というのは、もう少し理解されてもいい特質。「この楽曲がない」という話の意味が弱くなる、というか、「ないなら別のを聞く」「プレイリストに任せる」という世界。
— Munechika Nishida (@mnishi41) 2018年5月25日
別の言い方をすれば、音楽は「過去の名曲と新作の戦い」がほかのメディア以上に厳しい場所であり、うまく新曲を回すプロモーションをしないとやばい、っていう話なのですけど。(映像とかゲームとか書籍とか、消費回数の少ないメディアはちょっとありようが異なる)
— Munechika Nishida (@mnishi41) 2018年5月25日
この辺りの話、実のところ、音楽はその性質が出やすいだけで、他のコンテンツ市場も大きな違いは無い。インターネットという情報の本質を容易に変えてしまう技術によって、コンテンツの価値の方向性が大きく変わってしまったというところ。漫画も動画(映画やアニメ)も恐らくは似たような道のりを歩んでいくのだろう。
僕は大学生ですがストリーミングの素晴らしさには感謝しきれません。ストリーミングのおかげでT-SQUARE(THE SQUARE)との出会いがありました。
— Blogger_クマガイさん (@KumagaiNoGuchi) 2018年5月25日
30年も前に作られた(出会わなかったであろう)フュージョンがこのような形で出会えるならばとても最高なコンテンツだと思います。
若い世代が過去の曲を容易に再発見できるというのは、まさに「聴き放題」のプラスの効果ですね。 https://t.co/cnw7TVzLV7
— Munechika Nishida (@mnishi41) 2018年5月25日
運営元がなんらかの理由で配信しなくなった曲が「無かったことにされる」こともありえると考えるとちょっと怖いですね。盤で持ってればその後何があってもずっと聴けるわけで(CDも30年くらいで腐るとも言われてますが)。
わんこそば (@skicco) 2018年5月25日
そのために、「思い入れがある曲は買う」でいいのだと思います。 https://t.co/ZxyXZdzy8U
— Munechika Nishida (@mnishi41) 2018年5月25日
「いわゆるロングテールでしょ」という話なんですが、購入するものにおけるロングテールと、使い放題でのロングテールでは、尻尾の振る舞いがかわってくるのは必然、という部分があります。
— Munechika Nishida (@mnishi41) 2018年5月25日
「ふるまいの異なるロングテール」という概念は興味深い。よく見る裾が非常に長いグラフによるロングテールとは異なり、ベクトルというか軸がもう一つか二つ、増えた状態による、新たな概念でのロングテールなのかもしれない。
先日もちょいと触れたけど、ウェブ漫画で関連情報とか横目で見て、ちょいと気になってクリックしたら結構面白かったので巡回リストに加えて、気がついたら単行本も...なんてことも結構ある。アマゾンの関連商品でちょいと気になってチェックを入れたってこともある。色々な意味で、世の中の構造が変わっていく過程にあるのだよなあ、という感をひしひしと覚える次第。この辺りも時間があれば、じっくりと検証したいのだけどね。ブレストでもいいけど。
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