緊急地震速報の仕組みと、週刊誌のゴシップ記事の転送と

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今回の大阪の地震では地震を検知し、緊急地震速報を発表するまでの時間は41.9秒だった。一方、震源は13キロと浅く、緊急地震速報を発表した大半の地域に先に揺れが到達した。

先日の大阪の地震に関して、直下型地震であることから緊急地震速報がほぼ間に合わなかった、初動が生じてから速報が届いたなどの話もあり、こういう話が掲載されている。要は緊急地震速報なんて意味が無いじゃん、パニックを増幅させるだけじゃん、的なお話。少なくともタイトルではその雰囲気がフルスロットルだし、本文でも一応緊急地震速報のシステムの説明はあるけど、多分に不平不満がメインとなっている。

ただ、【あなたのケータイ、緊急地震速報受信の準備は出来てます?】などでも紹介しているけど、緊急地震速報は地震の予知では無く、地震波の到達していない地域に対し、到達前に到達するであろうことを事前通達する仕組みなんだよね。震源直下とかそばだと、そのタイムラグが生じず、地震発生後に速報が到着するってこともある。これはどうしようもない。それこそ時間をさかのぼるような信号波の開発でもしなきゃ。タキオン粒子とか(笑)。

それはともかく。今件の記事では地震の検知から速報発表まで41.9秒とある。この数字が「緊急地震速報なんて役立たず」的な本文の論調を裏付けるものとなっているのだけど、指摘の通り、実際に地震を体感した人には、そんなに遅いものでは無いというツッコミが山ほど来ている状態。

緊急地震速報はその仕組みとして、地震が発生する前に予知をするのでは無く、発生後に地震波未到達地域に対し、到達前に警告を発するものです。本文はともかく記事タイトルには、悪意や扇動の感が強く、残念ではあります。


気象庁の発表 平成30年6月18日07時58分頃の大阪府北部の地震について www.jma.go.jp/jma/press/1806/18a/201806181000.html によれば、

地震発生 7時58分
地震派検知時刻 7時58分38.7秒
緊急地震速報第1報 7時58分41.9秒

という時系列です。また「この地震に対し、地震検知から3.2秒後の07時58分41.9秒に緊急地震速報(警報)を発表しました」ともあります。本文中の「緊急地震速報を発表するまでの時間は41.9秒だった」は間違いです。


ということで、一次資料を探して間違いを指摘。実際には41.9秒では無くて3.2秒後に緊急地震速報は発せられている。速報を発したのが7時58分41.9秒なので、その部分だけを読んで「41.9秒後」としてしまったのだろうという好意的解釈をしてみるけど、これを正しく3.2秒後とすると、本文中のニュアンス「41.9秒も後になって発表されたんだよ」というのがおかしくなってしまう。まぁ、色々とあるのだろう。

また、本文の論調はタブロイド紙などでよく使われる【「早まった一般化」「過度の一般化」】の手法ではある。ごく少数の事例を取り上げて、それがあたかも大多数の絶対意見であるかのように見せる手法。そういう観点も併せ、ゴシップ紙的な記事でしか無いなぁ、と。まぁ、元々が写真週刊誌的なAERAによる、ウェブ限定掲載記事だから、そのレベルのお話なのか。

問題なのはこれがヤフーに転載されて、その品質・肩書が上乗せされてしまっていること。ウェブ掲載になると雑誌掲載と比べ、雑誌そのものの信ぴょう性や品質、確からしさの精査が難しくなるのに、加えて転送により、そのチェックがさらに曖昧になってしまう。先日【転送配信記事の元記事が間違っていた場合、転送配信先でも謝罪をする必要があるのか、そしてその境界線は】で取り上げたばかりだけどね。

まぁ、どこが書いたのか、どの雑誌の記事なのかは要チェックということなのだろうなあ、と。

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このページは、不破雷蔵が2018年6月20日 07:00に書いた記事です。

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