本屋でのシュリンクと本の売上と

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漫画の立ち読みご自由にどうぞ――。大手出版社の小学館が、書店で漫画を立ち読みできないようにするフィルム包装(シュリンクパック)の取りやめを呼びかけ始めた。名付けて「コミックス脱シュリンクパックプロジェクト」。この春、一部の書店で包装をやめたところ、少女・女性向け漫画で売り上げが20%増えたため、今後拡大する方針だという。

本屋やコンビニに並べられている本にビニールカバー(シュリンク)がかけられているのは色々な理由がある。18禁の本に行われているシールでの封印は多分に不特定多数が中身を見ないようにするためだけど、シュリンクの場合はその他にも、立ち読みで全部読まれてしまわないようにとか、汚されたり折られたりして商品価値が下がらないようにという意図がある。

最近では雑誌はともかく単行本ではそのいくつかにおいて、お試し版的な数話のみ確認ができる小冊子を併設しているところもあるけど、大手の本屋に限られるし、すべての単行本でそのような措置が取られているわけじゃない。その観点だけでも、やはりネット通販には勝てないなあという感は強い(ネット通販なら出版社側が望めばお試し版的なものはすぐに配信される)。

で、今件は特定の書店に依頼をして、いくつかの単行本に対してそういうシュリンク措置を止めて、すべてを閲覧可能にしたらどういう結果が出たのかという話。昔はみんなそうだったのだろうから、それと比較すりゃいいまで...と思ったけど、昔はデータを取っていないし、今と昔とでは本を取り巻く環境は大きく違うので比較対象にはならないな。

結果としては少女・女性向け漫画では売上増の効果があった、少年・青年向けでは売上面での効果は無かったものの本屋さん自身へのアンケートではポジティブな結果が出たという。

個人的にはこのデータにはちょいと疑問がある。単一の期間で、特定の単行本に限定した上での話なので、対象集団の特性で偏っている可能性がある。もう少し期間を伸ばし、対象の単行本の種類も幅広いものにしないと、当たり外れがたまたま、という可能性も否定できない。調査そのものは大変興味深いのだけど、精度の観点で勿体ないかな、と。


ただ今件の結果には複数の同意意見があり、非常に興味深いことに変わりは無い。男女で本への接し方の違い(好きな作品の動向も関係するのだろう)も併せ、本をどのような思惑で購入するのか、それによって男女それぞれ向けの本でシュリンクの存在意義が変わってくる。論文の一つや二つ、出来そうなテーマではある。例えばこれ、期間限定で特定の電子書籍を全部タダで読めるようにした場合、似たようなデータって取れないかな?...あー、アマゾンが実はすでにそういうデータを山ほど取得して、その上で色々やってるのかもしれないなあと思うと、アマゾンのそういう部局に勤めたくなる(待て)。

本の購入のルートをはじめ、本を取り巻く環境は大きく変化し、その変化は今もなお続いている。そのような中で、以前の状態を前提とした仕組みを維持し続けていたのでは、やせ細ってしまうのは仕方が無い。現状を詳しく、そして正しく精査し、その実情に合わせた変化...というか進化をしていかないと、滅んでしまうのは生物学の上でも裏付けされている事実ではある。

例えば以前言及したように、書店にアマゾンで注文した書物の受け渡し場の意味も持たせるってのはどうかな、と思ったのだけど、それってすでにコンビニで行われているし、アマゾン以外のサービス、例えばhontoなどでは対本屋ってことで実施しているのだよね。

と、なると、やはり昨今特に大きく注目されるようになっている本屋関連の話ってのは、時代の流れに伴う過渡期的動向であるのと共に、可視化の影響もあるのかな、と。


何しろ本屋の数そのものが減り始めたのは前世紀末辺りからの話で、アマゾン云々とは直接は関係ないからねえ。この辺の話って、例えばCDの売上とか、デパートの動向でも同じことが言えるのだけど。

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このページは、不破雷蔵が2018年7月16日 07:40に書いた記事です。

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