「現役世代の将来の不安による貯蓄志向の高まりから、個人消費に直接結びつかない状況である」

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「消費者は将来が不安だから消費しない。消費税で安心すれば消費が伸びる」というトンチキな話は結構耳にするけど、具体的にどのような筋から出て来るのかということになると、ソースをすぐにたどるのは結構難しい。ということで、ズバリその類が先日出てきたので、覚え書きも兼ねて。というか、コンビニを統べる協会の公的報告書でこんな話を堂々とするのってのは、よほど団体全体がスットコなのか、それともそのような発言をするようにどこかから何らかのアレがナニなのか。

「現役世代の将来の不安」があるから消費税で安定税収を云々ということなのでだろうけど、むしろ逆で、不安解消のためには多方面への将来への十分な投資が求められるわけで。高度成長期の心境を思い返せば分かるはずなのだけどねえ。その辺は無かったことにしたいのか。


第一貯蓄志向の高まり云々っていうけど、一方で数字的な貯蓄率が下がってるという話は頻繁に出てくるし、その貯蓄そのものもここ10年から20年ぐらいで大きく概念が変わっていて、「世代の将来の不安による貯蓄志向の高まり」ってフレーズは「言葉は通じるのに話が通じない」レベルの首を傾げる内容には違いなく。

第一消費税ってのは消費する時の罰金みたいな認識が消費者側にはある。消費のたびに税金を課せられるってのが認識されるし、支払った分の全部が対価としては返ってこないということになってしまっている。100円支払ったのに手元にあるチョコレートは93円分だよ、的な。物流の流れがそれだけ狭められることにもなる。


どうも経済関係の団体では、このトンチキとも表現できる「世代の将来の不安を解消するのには消費税引き上げによる安定財源。そうすれば消費も活性化される」という謎理論が大手をふるっている気がする。太陽が地球の周りをまわっているという話の主張のように思えてくる。

家計ベースでは「どれほど景気が悪くても毎月50万円何もせずに入ってくる安定財源」があれば不安は解消されるだろうな。100万円無いとダメだとか5000兆円ほしいとかいうのはさておくとして。家賃収入とか配当所得とか印税とか。けれど国家財政ベースでは、景気が悪いのならば景気を後押しするために、むしろ支出を増やす必要がある。そのための国債。

家計と国家財政では「何を目的としているのか」が大きく異なるし、収入・支出の構造は似て非なるもの。同じように考えると、ワナに陥る。

第一、国家財政で安定財源云々というのは、産油国の石油とかならいざ知らず、財務を取り扱う省庁の怠慢でしか無いんだよね。仕事を減らせるし、自分達の権限を増やせる。この辺りは以前に何度か説明した通り。

「太陽は地球の周りを回っているんだ」的なお話でしかないんだよね、「現役世代の将来の不安による貯蓄志向の高まりから、個人消費に直接結びつかない」「だから安定財源を消費税で」というのは。だったらその安定財源だけで税を構築して、他の税は全部無税にしちゃえばいいじゃん。なんでそうしないの? というツッコミすらしたくなるのだけどな。

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このページは、不破雷蔵が2018年9月30日 07:54に書いた記事です。

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