色紙100枚どの程度の効果があるのかという声も聞くんだけど、多分色紙を描くから置いてくれる冊数を増やしてくれ、という対書店用の販促であってお客さんへの販促にはほとんどなっていないのではないかというのが私の考えです。
— 津留崎優 (@hatori_niwatori) 2018年10月17日
話のトリガーはある編集者の「頑張ってるんだ」的な漫画ではあったのだけど、底にさり気に描かれていた「筆者に色紙100枚描かせた」というフレーズが色々と物議をかもしている。で、当方としては一番納得のいく解説というか分析がこれ。100枚の話が本当か否かは確かめようがないのだけど、似たような話はよく聞くものだし、この類の販促品のリターンはどうなっているのだろうってのも何度か言及している。
色紙が読者プレゼント用として用意されたのならば、その読プレをゲットするために単行本や雑誌の売上がアップする可能性はある。雑誌の読者プレゼントに好きな作家の色紙があれば、この号は買ってみようかと思うし、スペシャル好きならば複数買いして確率を高めようってのもありうる。単行本ならば締切の関係があるから初版をすぐにゲットしようと思うだろう。
けれど多くは対書店用の販促品。大きめのお店でよく見かける、例のあれ。ラーメン屋さんにもあるよね。あれと同じ。書店にはそれなりのアピールになるし、販促アイテムとしては見た目のよさがそれなりに期待できるので、配本の際の取引材料としては有効なわけだ。ゲーム会社がプレゼント本数増やすとか非売品のアイテムをたくさん提供するから、紹介ページを増やしてゴホンゴホン。
で、それってお客への販促としてはどれほど効果があるのだろう。
〇〇先生の色紙あるんだ!書店に見に行こう!と行く読者は最初から販促する必要が無いわけで、それで得するのは来てもらえる書店さん。冊数置いてもらえることによって目につく機会は増えるかもだけど、昨今それだけじゃ単行本買ってもらえなよなぁ。
— 津留崎優 (@hatori_niwatori) 2018年10月17日
超絶作画マンの色紙だったら多少販促効果ありそうな気がしますが、つまりそれは超絶作画マンに超絶作画で色紙を100枚描かせるという...ハイパーコスパ悪い販促...つらい...そもそもそんな鬼畜の所業最初に始めたの誰だ...
— 津留崎優 (@hatori_niwatori) 2018年10月17日
その色紙がもらえるのなら、その書店で買おうっていう動機づけにはなる。時折超大型書店で行われるサイン会とか特典配布が良い例だ。ただ、色紙100枚云々となると、そんな感じで読者に配る用として用意されたとは考え難い(もしそうなら、それなりの効果はあるけど、対象は限られるので、結局絶対数的な影響力は大したものでは無い)。
で、書店に色紙を見に行こうということで足を運ぶ、集客力があるかというと、指摘を読むと実はあんまり無いんじゃないかという気もする。その色紙に魅力を感じる人は最初からその書店に足を運んでいるだろうし、販促などしなくても対象の本は買うだろう。色紙があったから本を2倍買うということなどはしない。と、なると、書店の単なる数を増やしてアピールポイントを増やす程度の効果しか無いのではないか、参加賞のトロフィーをずらりと並べて、トロフィーがこんなにあるよという自慢の素材提供程度しか意味が無いのでは、と思ってしまう。
すげー有名人とかダイナミック素晴らしい内容の色紙なら話はちょっと変わってくるかもしれない。けど、SNS全盛の今では、その中身を見るだけならSNSですぐに閲覧できるだろうし、自分が手に取れない以上はさほど意味は無い。さらにそのような超意味持ち色紙を100枚も描かせるってのは、どれほどの労力が必要になるのか。うーん、やっぱりコスパが悪すぎる。
コスパという観点では、書店を考慮しない販促では、例えば今ちょいとトレンドになっている、作者の製作実況とかの方が、よっぽどよいコスパなのかもしれない。あるいはVRを使ってVRサイン会とか講演会とかもいいかもしれないな。
メリットが誰に、どの程度生じるのか、それを生み出すためのリソースはどれほど必要か、発信側のコストはどれほどでどれだけのリターンが期待できるのか。本の販促一つにしても、現状の環境や技術を考慮した上で、既存の手法が正しいのか、もっと別の方法を創り選ぶべきなのか、真剣に考える必要があるのではないかな、と。
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