在庫はあるのに、なぜスーパーに小麦粉がないの?
— 農業と食料の専門家/浅川芳裕 (@yoshiasakawa) May 10, 2020
答えは簡単。
実際、小麦原料はあるし、小麦粉もいくらでも作れますが、最大の問題は家庭用サイズに小分け包装する工場能力が、突如、急増した自宅でのパン・お菓子作り需要に追付いてないだけ(続)
ここ数日食材の買い物や、マスクなどの動向を調べに薬局とかドラッグストアなどに足を運んで気が付いたこと。そばやパスタなどの粉もの系食材の品切れ感が強いのと、小麦粉やホットケーキミックスなども結構棚が空になっていること。そばなどではお店側で「小麦粉の供給が云々」という説明があったので、また流通が混乱しているのかなとか、パスタだけではなくレトルトのパスタソースも同じような空状態になっているので、お手軽に作れる粉もの系食材が巣ごもり需要で需給バランスの崩れた状態になっているのかもと思ったり。
他方ホットケーキミックスなどがオークションサイトに出ているという、たわけた話もあり、色々な複雑事情が絡み合って現状のような状態になってるのだろうなーと。
で、その辺の話を専門家の方がつらつらと説明して下さっていたので、当方自身の勉強も兼ねて、覚え書き、と。
コロナ前は、小麦粉マーケット(500万トン)に占める家庭用需要は、たった3%の15万トン。一世帯で月平均250gぐらいの量。それが突然、3kgとか5kgとか10倍以上買いだしたらどうなる?家庭用の小麦粉工場ラインなんて元々、業務用の30分の一キャパしかないから、需要の急増分を製造できないわけ(続)
— 農業と食料の専門家/浅川芳裕 (@yoshiasakawa) May 10, 2020
一方、激減した外食向けの業務用在庫は余っているけど、これを小分けして、リパックするのは滅茶苦茶たいへん。言うのは簡単だけど、家庭用の包装資材を買い、再包装ラインを作り、食品表示もより厳しい小売用に変更して、法律に則った商品パッケージにしないといけない等、色々対応する必要が...(続)
— 農業と食料の専門家/浅川芳裕 (@yoshiasakawa) May 10, 2020
もちろん、既存の業務向け小麦粉袋(例:25㎏)の製造ラインを家庭用へ変更するのに、製粉メーカーと機械、資材メーカー等が協力して、頑張っている最中(続)
— 農業と食料の専門家/浅川芳裕 (@yoshiasakawa) May 10, 2020
しかし、需要に合った家庭用小麦粉パックの製造能力まで向上させるだけでは、欠品は解決しない。同時に、スーパー・卸からの注文に対して、日々応えられるまで工場の在庫水準を上げないといけない。そこまでいかないと、注文から納品までのリードタイムが長くなり、頻繁or時々欠品という状態が続く(続)
— 農業と食料の専門家/浅川芳裕 (@yoshiasakawa) May 10, 2020
といっても、自宅でのパン作り・お菓子作りブーム/特需がいつまで続くか、製粉工場サイドは見極めなければならない。家庭用製造ラインに投資しても、自粛解除でニーズが激減すれば、投資倒れになる可能性も。その意味で、欠品が解消される水準まで増産しない選択肢も工場サイドにあるといえる(続)
— 農業と食料の専門家/浅川芳裕 (@yoshiasakawa) May 10, 2020
今回の自粛で、自宅でのパン・お菓子作りが根付いた家庭なら、ネット通販やスーパーの特売で売っている業務用25㎏袋を買うのがいちばんシンプルな解決法。自宅で小分けしたり、知人・友人と分け合ったりすればいい。プロ向けの方が小売用より種類も豊富だから、いろいろ用途別に変えたり楽しめる(続)
— 農業と食料の専門家/浅川芳裕 (@yoshiasakawa) May 10, 2020
欠品の理由に話に戻せば、例年なら、1年の中でも家庭用小麦粉の在庫が減る時期と今回、急増した時期が重なった点も大きい。もともと家庭需要のピークはケーキやクッキー作りが増える冬場なわけで、例年で言えば春先から最も需要が減る夏場に向け、在庫減の最中に消費急増という相反する状況に直面(続)
— 農業と食料の専門家/浅川芳裕 (@yoshiasakawa) May 10, 2020
まとめれば①小麦粉がスーパーの棚から消えたのは、皆さん一人一人の消費行動の変化の結果で、在庫不足が原因ではない②小麦も小麦粉の在庫も小麦粉の製造能力もあるが、激減した業務用から家庭用へ製粉業界が商品シフトする調整段階にあり③その間は日頃買わない業務用を使って楽しみましょうという話
— 農業と食料の専門家/浅川芳裕 (@yoshiasakawa) May 10, 2020
要は小麦粉そのものではなく、製品化するプロセスにおける生産量が足りていないだけの話。三式戦闘機の本体はあるけどエンジンが無いよ、という状態(よく分からない例え)。
正直なところ、需要の急激な変化に供給側が対応しきれていないだけの話なので、トイレットペーパーの騒動同様、心配しなくてもすぐに状況は回復する。個人的にはそばが少々食べにくい状態になってしまっているのは残念ではあるのだけどね。
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